繋がれた鎖 4


『……何故、いる』

「うまっ。ここの団子もなかなか…おばちゃん、もう一皿追加!」


ゴンッ。
鈍い音がしたかと思えば頭がぐらりと揺れる。
打撃を与えたのが誰であるかというよりも、グーで殴るとはどういうつもりなんだということの方が気になった。


『…』

「俺も食べたかったんだよ!団子!」

『…それを食べ終えたら早く戻れ』

「無理、だな」

『…何故』

「…俺も東の方に用があるんだよ」


慣れないことはするもんじゃねぇ。

おばちゃんが持ってきてくれた団子を受け取りながらそう言ったのは、姫に顔を見られないようにする為。今…俺の目は泳いでいるだろう、と見え透いた嘘をついた自分に嘲笑した。

何故そこまでしてコイツをほっとけないと思ったのかは、正直なところ自分でも分からない。
だが、少なからず1人にしてはいけないと感じたのは事実だった。


「偶然だよ、偶然。だから…ついでに!途中まで着いてくからな」


瞬間、動きが止まったかと思えば。隣に座っていた少女は身体の向きを変えて座り直した。


『…馬鹿め』

「馬鹿っておま、」

『じっとしておれ!』


途端に額には温もりを、目には柔らかな光を受け止める。
あぁそういえば、さっき木の枝に掠ったんだっけ。と、初めてまともに見る彼女に無意識に息をのんだ。


『何だ、その目は』

「あ、いや…医療忍術が使えるだなんて知らなかったもんで…」

『…それ位しか、私には出来ないんでな。大体忍が枝に引っかけるとはどういうことだ』

「…すんません」

『馬鹿め』

「いや、だから馬鹿じゃなくて俺の名前は」

『先程にも言ったであろう?口を慎め、…!』

「な、危ねぇ!」


キィン、と耳に残る高い音を鳴らし、足元に刺さったのはどこから飛んできたのか持ち主不明のクナイ。
とっさに身につけていたクナイで弾くも、何かしらの違和感を感じた。


「一体どこから…」

『……』


辺りを見回してみても、近くに人の気配は感じられない。余程腕の立つ忍なのか、それとも…

いつ、どこから攻めてくるか分からない敵に、頭を悩ませているのも露知らず。
さらに2人に襲いかかる罠は、有り得もしない変化から訪れた。


『何の…音っ、!』

「伏せてろ!って、おい!どこに…っ」

『お前はアレを何とかしろ!』

「な!ちょ、待っ、」


"アレ"を目にした途端、店内へと駆け込んでいった少女に制止の声をかけても時既に遅く。
いささか猶予のあるアレ、といっても数秒もないのだが…に対抗すべく、シカマルは今最も有効であろう策を瞬時に捻りだしたのだった。

「チッ…影縫の術!」

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