true heirーモトメアウモノー
□vol.2 looking for me
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シェインファミリーはマフィアのような組織である。
街の一角にある小さなバーを入り口の一つとし、街の地下にアジトは蟻の巣のように広がっていた。
ウレインの部屋も、勿論その中にあった。
窓がなく、広いわけでもないその部屋は二部屋に別れ、簡素なベッドとチェストがある部屋、そして浴室と手洗所があるだけだった。
要塞での任務を終え、数日の休暇を与えられたのはいいが、ウレインには何もすることがない。
ベッドに腰掛ぼんやりしていると、部屋が控え目にノックされた。
「誰だ」
「わたしだ」
横柄な声音は、聞き覚えがあった。
「入れよ」
扉が開き、顔をのぞかせたのはやはり小柄なサクヤだった。
ツインテールだった髪を下ろし、淡い色合いの普段着を身につける彼女は、歳相応の子供に見える。
サクヤはベッドに腰掛けるウレインを認めると、微かに唇の端を引き上げた。
「お前、何もやることがないのか?」
「部屋から出れば、迷子になりそうだからな」
アジトははっきり言って迷路だった。
数日前にここに入ったばかりのウレインには、一度部屋から出て迷わずに帰ってくる自身はなかった。
サクヤは同感だとばかりに頷き、腕を組んだ。
「で」
「で?」
「用は何だ」
「ああ、そうだった。お前、特務部隊に昇進が決まったんだ。部屋も変わるぞ」
ああ、リヴィールがそんなことを言っていたような気が。
「引越しだ。別に荷物はそれほどないだろ?」
「言っとくが、それ以上入り組んだ場所に部屋があるならここから動く気はないぞ」
「そう言うな。特務部隊は仕事が多い。こんな狭い部屋では疲れは取れん」
早くしろ。と顎で指図され、ウレインはいらっときながらもさっさと荷物をまとめた。
「そう言えば、お前シュンを知ってるか?」
荷物をまとめる手を止めずに知らん、と首を振る。
もともと、荷物が少ないのでまとめるのは楽だが、最低限のものすら揃ってないなとウレインは顔をしかめる。
「シュンは、新しいウレインの上官だ」
「上官?」
「ああ。副隊長」
副隊長?たしか、ユーディじゃなかったか。