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□洋一と女体化したヒーロー達
主人公の魅力を読者に伝える技法として、主人公に惚れているキャラを出すというものがある。
総モテでも一人でも、そういったキャラがいることで、主人公はかっこいいorかわいいと読者に共通認識をすり込ませられるそうだ。
とまあ、好いた惚れたと言うと恋愛漫画っぽく聞こえるが、これは少年漫画にだって言えること。
少年漫画の主人公だって、大抵誰かに惚れられているものだ。
――しかし、ここで問題提起。
とっても!ラッキーマン。
その主人公の僕、追手内洋一に好意を寄せている女子がいないという現実。
・・・・・・主人公としてどうなのよこれ。これじゃ僕に魅力がないみたいじゃないか。
『なーに言ってるの!です代ちゃんがいるじゃないか』
そう気の滅いる答えを与えてきたのは、幸運の星だった。
いやいやいや。
僕は「はん」と鼻を鳴らし、苦笑する。
「あれを女子と認めたら、僕の何かが崩れる。女の子は可愛くてやわらかくて良い香りのするきゃっきゃっうふふな生き物なの」
つーか、女子に好かれたくても、その女子自体が少なすぎるんだよこの漫画は。
その数少ない貴重な女子だって、
みっちゃん→ラッキーマン
ひしょ香ちゃん→天才マン
ラマンちゃん→勝利マン
麻里亜さん→努力マン
だし。
「あーあ。僕の周りは野郎ばっか。比率が、男女逆だったらなあ」
ハーレム漫画が羨ましいぜこんちきしょう。
「幸運の星ぃ、お前の力で僕に惚れてる女の子とか出せねえの?」
僕はすねた口ぶりで言った。どうせなんとかならないと思っていたから、当てつけのための台詞だった。
だがしかし。
『惚れてる女の子は出せないが、ただの女の子なら出せるぞ?』
と、すんなり言う幸運の星。
えっ!マジで!?
「僕の周りを女の子だらけに出来んの!?してして!今すぐ!」
ってか何で今までやってくんなかったんだよ。
とも思ったけど、怒らせたらやってくんないかもしんないから言わない。
『よーし!じゃあ目を閉じてろ』
幸運の星が、一際きらびやかに輝く。僕はその眩しさに思わず目を閉じた。
***
目を覚ますと、僕は自分の部屋で寝ていた。チュンチュンとすずめの鳴き声が聞こえる。
その声に誘われるようにカーテンを開けると、朝の光が消毒をするように部屋全体を照らしあげた。
さっきまでは昼で、外で、幸運の星と会話をしていたのに。
「・・・・・・どうなってんだ?」
僕は窓を開けて空を見上げた。
『説明しよう!』
幸運の星は、自信満々で言った。
『今いる男キャラを女体化してみたぞ。誰と恋に落ちるか楽しみだな。
あとここはみんな人間の、ヒーローのいない平和な世界だ。
記憶や設定なんかも操作してあるから、そこんとこはなあなあでよろしく!』
はい?
「女体化!?違う、僕が言っているのはそういう意味じゃなくて新規の女の子キャラを出してってことだよ!」
『えー。でももうこの世界はそういう世界にしちゃったしー。
誰かに会ってみれば、恋が始まるかもよ?』
「誰かって・・・・・・。全員元は知り合いの男だろ?」
どうあがいても、絶望。
某ゲームのキャッチコピーが頭をよぎる。
「元には戻せないのか?」
『今日一日が終われば、元に戻るんだなこれが』
「良かった・・・・・・幸運の星の力がその低度で本当に良かった・・・・・・」
僕は脱力し切った顔で呟いた。
『おい!聞こえてるっちゅーの!』
それでも幸運の星はあっけらかんと言って、
『お、早速誰か来たぞ』
と輝いた。
ガチャリ――
僕の部屋のドアが開かれ、そこにいたのは
- 女子制服を着た努力
- 小学生四年生となる妹のやあな
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