創作
□ヤンデレ彼氏
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自分の考えていることが逸脱していると思うな。
自分が考えたことは頻出していると思え。
思い上がるな。
つけ上がるな。
その程度の考えならば、いくらでもいるんだ。
特別でも珍しくもない。
ありふれたことだ。
***
蝉の悲鳴もクーラーの唸り声も全て遮断。
ここは夏も侵入できない快適空間。
「×××?」
俺はあいつの名前を口にしながら、風呂上がりの足を遠慮なく床にくっつける。ひんやりとしたフローリングは、さらさらの感触。
「×××?寝てんのか?」
答えがないのでもう一度呼び掛ける――が、所詮は狭いアパートの一室。呼び掛けている間に、俺は床に寝そべるあいつの隣にたどり着いてしまった。
「×××・・・・・・」
伏せられた瞼。
汚れのない白い肌に黒い睫毛がよく映えていて。俺はその病的な美しさに思わず息を呑む。
俺の×××。
ずっとずっと見ていたい。朝も昼も夜も、ずっと。
俺の×××。
俺だけの×××。
思考と同調するように、目線をゆっくりと顔から体に移動させる。余分な脂肪のない、細い体。
「×××・・・・・・」
ありありと頭の中でこいつの痴体がリアルに流れる。この体のどこをどうなぞってやればこいつがよがるのか。こいつの泣き声がどれだけエ口いのか。それを知っているのは俺だけで、それでいい。
誰にも渡したくなんかない。
「愛してる」
眠りやすいように曲げられた細い足。それを切断してしまえば、こいつは一生俺の物になるのだろうか。
なんて。
こんなことを考えてしまう俺は病んでいるのかもしれない。
「・・・・・・ごめんな?」
実行はせずとも同罪な気がしたので、俺は罪滅ぼしのつもりで×××の瞼にそっと唇をつけた。
同時に、つけっぱなしのテレビから笑い声が響く。
・・・・・・なんだか自分が笑われているみたいで居心地が悪い。
「ったく、・・・・・・テレビぐらい消してから寝ろよなー」
俺は頭を掻きながら×××の傍らに転がっているリモコンを広い、立ち上がった。
画面ではみんな楽しそうに笑っている。
「みんな幸せそうだな」
そんな感想付きで電源ボタンを押すと、光の消えた真っ暗な画面が広がった。
そしてそこには俺の笑顔と、俺の足首に×××が鋭い歯を向ける姿が映し込まれていた。
***
噛み千切って噛み契る。
僕が与える君の籠。
そして君に与えられるのは僕だけの加護。
アキレス健をなくした君は、もうどこへも行けないんだ。
***
→あとがき
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