創作

□自由人長男
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公園の脇を通ったらブランコがギーコギーコと揺れていた。四つあるうちの左から二番目だけが揺れていた。
はて、誰も乗っていないのにどうしたことかと目を擦ってみると、強く擦り過ぎて涙が出てきた。痛い痛い。
そんな歯がゆい痛さで悶える我が輩を笑うかのようにブランコはますます揺れる。
こしゃくな。

だかしかし。
見ていると、海の波や、洗濯機の渦、風に飛ばされ予測不能の動きを見せるビニール袋を見ているのと同じ感覚の楽しさが沸き上がってきた。

我が輩は涙を拭きはらい、柵をヨッと飛び越え、公園内に侵入。それでもブランコは我が輩に臆することなくギーコギーコと動き続ける。

「お!そうだ!」

座ったら自動的にブランコが動いてくれるかもしれない。我が輩はウキウキしながら座ってみた。窮屈だったがなんとか尻は挟まった。

しかし、残念ながらブランコは動きを止めてしまった。

我が輩は口を尖らせたが、いつもより低い目線は新鮮だったので、すぐに口は柔らかくなった。そして脇に抱えていたスケッチブックで、ここからの目線の絵を描くことにしたのだ。

暫く没頭。暫し待たれよ。

どれくらい時が立ったが解らんが、我が輩は描き終わった。
上手いかどうかは他人が決める。気に入ったかどうかは自分で決める。

結果、気に入った絵が描けた。良かった。

我が輩は満足げにブランコから尻を離す。
と、また来てねと子供の声が聞こえた。

今日は風の強い日だ。
きっと風の音だろう。

だからブランコも揺れていたのだ。


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