創作

□忌みのない二人の意味のない食卓
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「――これ?おいしいが何か?
・・・・・・『よくそんなものが食えるな』だって?
失礼だな。僕にも。食材にもだ。
え?ああ、そうかい。そうかい。
君は僕が異常だと言うのだね。罵るのだね。蔑むのだね。
正常ではないと言うのだね。哀れむのだね。見下すのだね。
だか正常の定義は人によって変わるんだよ?
君は君の決めた正常に当てはまらないから僕を異常呼ばわりするのだろう?
だけど、僕は僕の正常の定義にそって行動している。僕の中で僕の行動は完全に正常なのだよ。
君が自分は正常だと思っているように。
君だって呼吸することが異常だと言われたって止める気は起きないだろう?
だって、悪いと思っていないのだから。
純粋な生命維持活動なのだから。
え?
『僕は正常だ』だって?
ははっ、まさか。
だって君は人の肉以外食わないじゃないか。食えないじゃないか。
しかし君から見たら、人の肉以外を食べる僕の方が異常なんだね。
残念ながら、表面的な社会の正常と異常は倫理の多数決で決まるんだ。
そして君は少数派だ。
・・・・・・なあ、人が話しているのだから、人肉を食べるのを止めて僕の方も見てくれよ。全く君って奴は。
君って奴は」


僕は彼のオデコにキスをした。


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