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□だるまさんは転ばない
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だーるーまーさーんーがーこーろーんーだ


***


春の日の午後。
穏やかな日の光が、葉の隙間から二人を照らす。

「よいしょっ・・・・・・とガル」

そう言って、立ち上がったのは一匹狼マン。彼は言う。

「もうそろそろでお昼の時間だガル」

『ああ、そうだね――』

答えたのは、一匹狼マンに背負われている友情マン。獣の耳をくすぐるように、友情マンは優しく囁き、

『じゃあ、帰ろうか』

その言葉を受けて、一匹狼マンは二人の住む家に向かう。それを邪魔をするものは誰もいない。
ここは、地球から遠く遠く離れた惑星で、二人だけで廻る世界だからだ。


***


「俺が何でもやってやるガル」

一匹狼マンは友情マンの手の代わりにせっせと働く。ならばその間、友情マンは自由になった両手で誰を掴む?

「俺がどこにだって連れてってやるガル」

一匹狼マンは友情マンの足の代わりにせっせと働く。友情マンを誰かの元へ、運びながら。

「俺は友情マンの役に立っているガル」

なのにどうして、胸が痛むガル?

たくさんの友達に囲まれる友情マンを、一匹狼マンは後ろから見据える。

そして、この痛みの名前を知らない獣は、何かを確かめるようにそっと呟く。

「俺は友情マンの手と足ガル」

――だったら友情マンの手と足はいらないんじゃないかな?

頭の中で聞こえた声は、紛れもなく友情マンの声だった。


***


惑星の静けさは死の谷を彷彿させる。だが、あの頃とは決定的に違う事実が一匹狼マンを現在に繋ぎ止めていたので、過去に蝕われることはなかった。

「――俺には友情マンがいるガル。何も怖くないガル」

背負っているリュックサック、もとい、リュックサックから頭だけを出している友情マンに言葉を捧げる狂信者。

友情マンの肌は、バナナの皮が黒くなっていくようにくすんでいる。
美しい膿が、徐々に友情マンを飲み込んでいく。

それでも、

『私も幸せだよ』

動く気配のない空気。
それでも、一匹狼マンは友情マンの声を聞く。





終わり。

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