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□シークレットアンサー
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問題に答えが埋まったり。答えから問題が生まれたり。
複雑にして、雑なお決まり。

***


中学生のお小遣いは少ない。
なのに、エロ本は高い。

「ったく」

だからクラスの連中と複数のエロ本を回しているのだが、行ったり来たり、いい加減何度も同じもん見てりゃそりゃ飽きる。
きっと、僕が今裸のねーちゃんを前にしても勃たないのは、そのせいだろう。

「・・・・・・あーあ。使えねーなー」

予定していた自慰行為が決行出来ず、僕は、暇を持て余すようにベッドにごろりと横になる。

――することがない。
――考えることもない。

それだけ聞くと気楽なように思えるが、何故だろう。

広がる天井。
狭まる考察。

僕を覆う酸素が、時間を無駄にするなと責めてくるようで、酷く居心地が悪い。

ああ、あれか?僕がだらだらとしているこの瞬間、その瞬間を生きたいと願った死人がいる。的なやつか?

だからなんだよ。知るかボケ。

「洋ちゃ〜ん」

「・・・・・・ん」

底抜けに明るい声に続き、返事と同時にドアが開いた。はなっから僕の返事を待つつもりはなかったようである。

「あらあら洋ちゃん、寝てたの?」

「いや、横になってただけ」

・・・・・・何もしてなくて、マジで良かった。

僕は苦い顔でベットから起き上がり、改めてママを直視。その手には、トートバッグが握られていた。

「・・・・・・で、何?」

「えーとね、煮物をたくさん作ったから、努力ちゃんの所にも持って行ってあげてほしいの」

ママはトートバッグを突きだし、お願いのポーズ。


「こんな時間に出歩けと」

壁にかかる時計は既に十時過ぎを指している。なので率直な意見をここで一つ。

「普通なら、逆に止めない?」

「洋ちゃんなら朝も夜も関係ないでしょ〜?
年中ついていないんだから〜」

確かに。

「はい。じゃあお願いね〜」

にこにこと、ママは僕にトートバッグを押し付ける。ほのかな温かさが布超しに伝わる。

「できたてなんだね」

「そうよ〜。だからあったかいうちに届けてほしいの〜」

「・・・・・・面倒くせー」

「面倒くせーは拒否じゃなくて、肯定の仕方ねーなーと同一とみなされるわよ〜?」

「なんでそうなるんだよ」

ママはいつも通り微笑み、答える。

「うーん。ボーイズラブだって、お仕置きとご褒美はおんなじ意味合いでしょ?」

「・・・・・・よくご存じで」

「作家の妻ですもの」

今度はウィンク付きで答えやがった。

ウィンクなんて古いってーの。

僕はそう思ったが、しかしなかなかどうして可愛かったので、この感想分は黙っておくことにした。


***


そもそもどうして僕がボーイズラブのうんぬんかんぬんを知っているという前提だったのだろう。

そんな疑問に家を出たあとに気付き、しかし、そんな疑問も外の寒さですぐに忘れた。

今僕が意識できるのは、胸に抱き締めているバッグから発せられるうっすらとしたぬくもりだけだ。

「あーあーマジで寒い寒い寒い。さっさと渡してさっさと帰ろう」

どうせ誰もいないだろう夜道。
僕は遠慮なく呟きながら足早に歩く。

「てか暗っ」

進むにつれ、だんだん街灯の設置間隔が広がり、公園に到着する頃にはゼロになる。

まあ、九十年代なんてそんなもんさ。

昔はゴミ袋なんて真っ黒だったんだぜ?
さながらこの公園のように。

「って、あれ?」

ゴミ袋に一点の穴があき、ゴミがそこから外の光を見付けるように。

真っ黒なはずの公園にも、だいだい色の光がともっていた。

近付くと、それは火だった。

「努力、たき火か?」

「あ、師匠!」

努力は僕に気付くと慌てて立ち上がり、その頬を、赤い炎が頼りなく照らした。おかげで、努力の表情がよりよく見える。

「師匠、こんな時間にどうされたんです?」

「ほい」

言って、僕はトートバッグからタッパーを取り出し、努力に渡した。

「ママが作り過ぎたからお前にって」

「おおお!ありがたき幸せ!」

努力は卒業証書を受け取るように、うやうやしくタッパーを受け取った。
やることがいちいち大袈裟な奴だ。

「そんなかしこまる程のことでもねぇよ」

僕は努力の隣にしゃが込み、燃え盛る炎に両手をかざす。

「お〜生き返る〜」

やはり火は熱い。
帰る前にちょっと暖めさせてもらおう。

「努力、もう燃やすもんねーのか?」

「いえ、まだ数冊あります」

数冊?

「まったくけしからんことです。子供も来るような公園に、こんないかがわしい俗本を捨てるだなんて」

いかがわしい?

「今朝、公園のそうじをしていたら見付けたのですが、燃やそうにも学校に行く時間がきてしまい、帰ってきたら子供達が公園で遊んでおりまして・・・・・・。
いやはや、そんな中、火を起こすのも危ないと判断しまして」

言いながら、努力は僕の隣にしゃがみ、タッパーを置く。

「それで燃すのがこんな時間になってしまいました」

努力は自身の行動の遅さを恥じったのか、苦笑した。そして足元から一冊の雑誌を手に取り、燃やそうと火に掲げる。

ゆらめく炎に照らされたその雑誌の表紙は――

まぎれもなく、エロ本だ!

「こっのバカッッ!」

「うわ!?何ですか?急に」

僕は努力を押し退け、残っているエロ本を確認した。

「・・・・・・五、六冊ってとこか」

とりあえずまだ残っていて良かった。
だが、無念は晴れない。

「ちきしょー。燃やされた本がもったいねー!
努力、お前自分が読んだからって処分するなんてひでーよ!」

「よよよ読んでませんよ!」

「はあ?読んでないのに燃やしてんのか?」

「当たり前です!」

当たり前なのか。

「こんなハレンチなもの、私は断じて読みません!」

「じゃあ努力って、オナッたりする時どうしてんの?」

「お、な・・・・・・?」

眉間に皺を寄せ、小首を傾げる努力。完全に異国の言葉扱いである。
僕は試しにしこしこっとジェスチャーも試してみた。

「・・・・・・?」

これも不発。
努力の首は傾いたままだ。

僕は引きつった笑顔を浮かべながら、まあ有り得るかもなーとも思っていた。

ずっと一人で山で修行をしていた努力。

誰からも何も教わって来なかった努力。

ここで僕は、ほんの少し――ほんの少しだけ、いたずら心が湧き出てしまった。

「努力、ちゃんといじってやんねーと大きくなんねーぞ?」

僕は努力の後ろに回り、下半身に向かって腕を伸ばす。

「あの、師匠?」

「いーから黙ってろ」

僕の腕は努力の脇腹をすり抜け、優しくあれに触れる。
柔道着超しに、ふにゃっと柔らかい感触。

あれ?なんだろう。
ゾクゾクする。

「っ師匠!?」

「これはな、男ならみんなやってることなんだぞ?」

言いながら、僕はそのまま手を上下に動かした。
その度にゴソゴソと柔道着の擦れる音がする。

「あの、何だかむずむずします・・・・・・」

「それは良かった」

「むず痒くなるのは良いことなのですか?というか、これは一体何が目的で、どんな結果が得られるのですか?」

努力は初めての感覚に戸惑っているのか、腰が引き気味だ。でも、僕の手を振り払う様子はない。

“師匠として”僕を信じている結果だろうが、まあいいや。

信頼も裏切りも僕には関係ない。全て努力が決めることだ。

「うーんとね、これは保健の勉強?みたいな」

詳しい説明は保健の先生におまかせしよう。
その代わり、僕は努力が抵抗しないのを良いことに、柔道着の中に手を滑り込ませた。

「ひっ、やっ・・・!!」

他人どころか、自分でさえもいじったことのない部分への直刺激。
激しく手を動かすと、努力は面白いほど反応してくれる。

「はっ、あっ・・・やぁ、あ・・・師匠っっ」

それが楽しくて楽しくて。

「はははっ!すっげーかてー。フル勃起じゃん!」

「お・・・かしい、おかしいですっ!あつくて、いたくて、はあっ、んっ」

「ぬるぬるしてるのわかる?努力のから出てるんだよ?それを僕の手に擦りつけているんだよ?自分からこんなに腰振っちゃってさ」

「ご、ごめんなさい・・・でも、止まらないんで、すっ、ぅ、んっ」

「そんなに気持ちいいの?」

「は・・・い。師匠の手、気持ち、いい・・・です・・・」

「・・・・・・そ」

きっとこれは優越感。

小学生が覚えたての九九を幼稚園児に得意気に披露しているような、中身のない優越感。

それでも。
僕は夢中で、力の限り手を動かした。

「あついっ、師匠っ、師匠っ、あ、んっ・・・ぁっ・・・!!」

ぎゅうっと僕の服をにぎりしめ、荒い息を繰り返す努力。

それに応えるように、僕は親指の腹で裏筋をなぞり、もう片方の手で胸の尖端をついばんでみせる。

「ピンって立ってる」

「いっ・・あ・・・っ」

ビクビクっと努力の体が震える。
努力の中で快感が登り詰めているのだろうか。

そう考えると僕自身のものにも軽い興奮が走る。
つーか勃起してる。

「ふうぁ、あああっ・・・!!」

と、努力のあえぎが一段と切羽詰まり、体が大きくのけぞった。

なので、

「・・・・・・はい。今日はここまで」

僕はあえて、努力が射精する前に手を離した。

「・・・・・・?」

どうして?そう言いたげに首を振り返らせた努力は、後ろにいる僕と鼻と鼻が合わさりそうになった。
潤んだ赤い瞳が僕を差す。

「続きはまた今度。僕はそろそろ帰らなきゃ」

「あ、あのっ、でもまだ体がうずいて・・・。どうしたら止まるんですか・・・?」

「我慢しろ」

僕は笑いながら通告した。

「僕が良いって言うまで、絶対いじるな」


***


こういうのは資源ゴミだから僕が片付けてやるよ。


と、恩せきがましくエロ本を持って帰ってきた僕は、家に着くなり早速ティッシュを用意してエロ本を開いた。

「巨乳でも貧乳でもエロけりゃいいってもんよ」

ページをめくる度に現れる初めて見る顔ぶれのおねーさん方。

「・・・・・・」

しかし、喜んだのも束の間。
まったく僕のモノが反応すしない。

まさかインポ――いや、でもさっきは反応したし・・・・・・

「謎だ。謎すぎる。
謎過ぎて解く気にもなれない・・・・・・」

とにもかくにも。

僕は予定していた自慰行為が決行出来ず、暇を持て余すようにベッドにごろりと横になった。

「・・・・・・今ごろ努力、どうしてっかなー」

僕とは反対に、下半身のうずきを必死に耐えているのかな。

もしかしたらラマンちゃんのスカートの中を見た時と同様、円周率を延々と呟いているのかもしれない。

「あいつ、真面目だからなー・・・」

イカせてあげなかったのは、ちょっと可哀想だったか。

頭の中に、先程の努力のあえいでいる姿がちらつく。

『はあっ・・・はあっ、ん、師匠っ・・・』


少し触れただけで壊れてしまいそうな敏感な肌。

平な胸で尚更目立つ、尖った乳首。

破裂しそうな熟れたショタチン。

「あ」

おいおいマジかよ。

「勃ってるし」






終わり

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