裏系はR18でお願いします(´∀`)
□羨望の先の、まぼろし世界
1ページ/1ページ
静かに始まり静かに終わる、僕を包み込んだこの世界。
薄い幕は破けもせずに、ただひっそりと、枯ちていく。
***
沈殿していく思考。
まどろむような視界。
日に日に衰弱していく体。
一匹狼マンはベッドに横たわり――体を動かす力もなく終わっていく。
それでも、一匹狼マンは幸せだった。
自分の半生を思い出し、懐かしみ、胸に染み込ませていれば、心穏やかな気持ちになれるからだ。
とはいえ、一番初めの思い出は、父親の遺書だったが。
(――死んだら、親父に会えるだろうか)
遺書には他人を信じるなとあったが、それは違うと教えてあげたい。
幼少時。一人、崖に取り残された一匹狼マンは、小屋に残された本を読んで過ごしてきた。そこには、たくさんの愛がえがかれていて。
現実にそんなものはないから、人は作り物の世界を作るんだ。
そう、一匹狼マンは思った。
絵空事より、肉親の遺書を強く信じた。
だけど。
毎日毎日読むにつれ、一匹狼マンは他人が恋しくなっていった。
本の中のような出来事が、羨ましくなっていった。
(自分も誰かを愛して、愛されてみたい)
そして、やってきたのがあの男。
最初に出会った、あの男。
一匹狼マンは喜んだ。
父親の言う通り、裏切られるまでは。
潰れた肉。砕けた骨。奪われた心。
(心――か)
暴力的に空いた穴には、恨みだけを詰め込んだ。
悲しくなんかない。
泣いてなんかない。
それを認めてしまうと、あの男を好きだったことになってしまうから。
そんなの、あまりに惨め過ぎる。
(だから、俺が持つのは怒りだけガル)
『絶対あいつを探し出して、殺してやるガル』
(――でも今なら)
父親の言いつけを背くことへの罪悪感が、多少なりともあったけれど。
自分ではない誰かと過ごす初めての日々は、とても楽しかったと素直に言える。
(あいつが大好きだったガル)
(だから、裏切られて悲しかったガル)
そう思えるようになったのは、友情マンや他のヒーロー達のおかげだろう。
ヒーロートーナメントで友情マンに拾われるように救われ、共にバックコスモス・サミット16世とも戦い、ナイナイ16の一員にまでなれた。
そのさい、他のヒーロー達と合体技まで披露する始末――崖の上に一人でいた時には、とてもじゃないが考えられないことだ。
他にも大宇宙統一トーナメントや、束の間の友情マンとの学校生活。
騒がしい所は苦手だったけれど、友情マンの肩越しで過ごした学校生活は、胸が踊るものだった。
目を瞑れば、景色や空気まで色鮮やかに思い出せる。
(体育祭じゃ、友情マンを抱えて走ったりもしたガルな)
クスリと小さな笑いを漏らし、一匹狼マンは一息ついた。
いろいろあって、いろいろあって、いろいろあった。
思い出すだけで、胸が柔らかな暖かさに包まれていく。
(世界は、こんなにも愛に包まれていたガル)
そういったものを、本だけの知識でなく、ちゃんと自分の一部として持てて良かった。
――自分の一部。
そういえば、友情マンはどこに行ったんだガル?
『何言ってるの、ここにいるじゃないか』
『ああ、本当だガル』
一匹狼マンは嬉しそうに微笑んだ。
幸せで。
幸せの中、死んだ。
生涯、崖から出られることのなかった一匹狼マン。
ベッドの傍らには、ヒーロー達が出てくる小説が積み重ねて置いてある。
それは、一匹狼マンが造り出したまぼろし世界の、基盤でもあった。
(現実にそんなものはないから、人は作り物の世界を作るんだ)
***
あとがき
文章が下手過ぎて意味伝わらないと思うので、ちょっと説明(泡)
最初に出会った男やラッキーマン達は、全部一匹狼マンの妄想っていう。
崖から落ちた妄想は、父親の言いつけを守らない罪悪感から。
そして妄想ってことには気付かないまま一人で死んじゃう、そんなこんなの話でした(;´Д`)
でもずっと一人で、なまじっか本で外の情報を知っているとなると、精神病むと思う。
.