裏系はR18でお願いします(´∀`)

□羨望の先の、まぼろし世界
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静かに始まり静かに終わる、僕を包み込んだこの世界。
薄い幕は破けもせずに、ただひっそりと、枯ちていく。

***

沈殿していく思考。
まどろむような視界。
日に日に衰弱していく体。

一匹狼マンはベッドに横たわり――体を動かす力もなく終わっていく。
それでも、一匹狼マンは幸せだった。

自分の半生を思い出し、懐かしみ、胸に染み込ませていれば、心穏やかな気持ちになれるからだ。
とはいえ、一番初めの思い出は、父親の遺書だったが。

(――死んだら、親父に会えるだろうか)

遺書には他人を信じるなとあったが、それは違うと教えてあげたい。

幼少時。一人、崖に取り残された一匹狼マンは、小屋に残された本を読んで過ごしてきた。そこには、たくさんの愛がえがかれていて。

現実にそんなものはないから、人は作り物の世界を作るんだ。

そう、一匹狼マンは思った。
絵空事より、肉親の遺書を強く信じた。

だけど。
毎日毎日読むにつれ、一匹狼マンは他人が恋しくなっていった。
本の中のような出来事が、羨ましくなっていった。

(自分も誰かを愛して、愛されてみたい)

そして、やってきたのがあの男。
最初に出会った、あの男。

一匹狼マンは喜んだ。
父親の言う通り、裏切られるまでは。

潰れた肉。砕けた骨。奪われた心。

(心――か)

暴力的に空いた穴には、恨みだけを詰め込んだ。

悲しくなんかない。
泣いてなんかない。

それを認めてしまうと、あの男を好きだったことになってしまうから。
そんなの、あまりに惨め過ぎる。

(だから、俺が持つのは怒りだけガル)

『絶対あいつを探し出して、殺してやるガル』

(――でも今なら)

父親の言いつけを背くことへの罪悪感が、多少なりともあったけれど。
自分ではない誰かと過ごす初めての日々は、とても楽しかったと素直に言える。

(あいつが大好きだったガル)

(だから、裏切られて悲しかったガル)

そう思えるようになったのは、友情マンや他のヒーロー達のおかげだろう。

ヒーロートーナメントで友情マンに拾われるように救われ、共にバックコスモス・サミット16世とも戦い、ナイナイ16の一員にまでなれた。
そのさい、他のヒーロー達と合体技まで披露する始末――崖の上に一人でいた時には、とてもじゃないが考えられないことだ。
他にも大宇宙統一トーナメントや、束の間の友情マンとの学校生活。
騒がしい所は苦手だったけれど、友情マンの肩越しで過ごした学校生活は、胸が踊るものだった。
目を瞑れば、景色や空気まで色鮮やかに思い出せる。

(体育祭じゃ、友情マンを抱えて走ったりもしたガルな)

クスリと小さな笑いを漏らし、一匹狼マンは一息ついた。

いろいろあって、いろいろあって、いろいろあった。
思い出すだけで、胸が柔らかな暖かさに包まれていく。

(世界は、こんなにも愛に包まれていたガル)

そういったものを、本だけの知識でなく、ちゃんと自分の一部として持てて良かった。

――自分の一部。

そういえば、友情マンはどこに行ったんだガル?

『何言ってるの、ここにいるじゃないか』

『ああ、本当だガル』

一匹狼マンは嬉しそうに微笑んだ。
幸せで。
幸せの中、死んだ。

生涯、崖から出られることのなかった一匹狼マン。

ベッドの傍らには、ヒーロー達が出てくる小説が積み重ねて置いてある。
それは、一匹狼マンが造り出したまぼろし世界の、基盤でもあった。

(現実にそんなものはないから、人は作り物の世界を作るんだ)


***

あとがき

文章が下手過ぎて意味伝わらないと思うので、ちょっと説明(泡)

最初に出会った男やラッキーマン達は、全部一匹狼マンの妄想っていう。
崖から落ちた妄想は、父親の言いつけを守らない罪悪感から。
そして妄想ってことには気付かないまま一人で死んじゃう、そんなこんなの話でした(;´Д`)

でもずっと一人で、なまじっか本で外の情報を知っているとなると、精神病むと思う。
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