夢御伽
□Death*Killer-3
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If only this rain would stop...
---この雨が止みさえしたら、
どうしてそんな眼をするの?
どうしてそんな顔をするの?
貴方には、私の心が判ってしまうの…?
そんな顔、しないで。
楽しそうに笑っていてよ。
貴方の事を、
私はずっと想っているから。
「好きだ」
「愛してる」
その言葉が私を縛った。
呪縛として、足枷として、私をこの世界に留めるの。
…居なくなりはしないかと。
だから…ずっと私の手綱を握り締めていて?
私はずっと、囚われて離れない。
【記憶】
暗い部屋。音の無い、唯一の切り取られた空間。
また、手首にみとれていた。
汚い手。
赤黒く、消えなくなった傷跡。
「真澄?入りますよ?」
と、世界の向こう側から侵入者。
ガチャリ、
軽い音を立てて入ってきた男は私の彼。
射手矢 秋人。
「これなんだけどもうすぐ俺達、付き合って1年でしょう?だから…って、またやってるんですか?」
「秋人、さん…」
乾いた溜め息を一つ。
秋人は真澄を引き寄せるように抱き締めた。
「切らないって約束したでしょう?俺はちゃんと此処にいる。だから真澄も俺の傍に居て?…愛してる、」
「…ん、」
秋人さんは優しい。それでいてとっても暖かい。
自分を傷付けることでしか生きられない私。そんな私を秋人さんは、いつもこうやって包み隠してくれる。
「少しずつ、忘れましょう?」
「はぃ。」
静かな部屋、ゆるりと時は流れ行く。
大好きで一杯で
ゴメンナサイが溢れてく…
秋人は真澄の意を悟ったのか、落ち着いた口調で言葉を紡ぎ始めた。
「生きてるのは辛いけど、真澄に会えないのはもっと辛い。これは俺のエゴになるんだろうけど、君がそれで生きてくれるのなら俺はどんなことだってするよ。」
「秋人さん…有難う。」
うつむき加減に言う真澄の髪を秋人はくしゃりと掻き分けた。
「じゃあ今度は俺の話、聞いてくれる?」
にこりと微笑む彼。
やっぱりこの笑顔が一番好き。
「はぃ、何です?」
「来週で俺達1年目でしょ?だからどっか行こうかなって思って。」
「わぁっ、ほんとですか!?私、綺麗なトコ行きたいですvV」
「綺麗なトコって何処だよ…」
お互いに笑い合って、
時には慰めてもらったりして。
我儘なのは私の方なのに。
それが一番落ち着くの。
貴方の言葉が、私の精神安定剤。
「それじゃあ、あそこがいい。秋人さんと初めて会った場所!!」
「え?でもそこ、全然綺麗じゃないよ?」
「いいのッ!!約束ッ!!」
「…わかった。」
繋いだ小指から伝わる体温。
温かくて、くすぐったくて、
ずっとずっと笑顔で居られた。
記念日まで後1週間を切った。
秋人さんと出会って以来、一度も足を運んでいなかった場所。
落ち着かず、当日の事ばかりを考える。
何の服を着ていこうか、
何の話をしようか、
どんな言葉を返したら喜んでくれるだろうか…