dream

□夢から覚めて
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ふと気が付くと、俺は真っ暗闇の中にいた。
音もしない。自分の体すら、何もかも見えない。







あれ、俺どうしたんだっけ。
…あぁそうだ。俺は任務中、AKUMAと戦闘の最中に背後をとられて…ー











…俺、死んだのかな。

今いる場所が、狭いのか広いのかすらわからず、俺は恐る恐る足を踏み出した。






『ラ…ビ…』






ふと、どこかで誰かが俺を呼ぶ。


…あぁ、そうか。
俺は今ラビなのか。









『ラビ…』







また誰かが俺を呼ぶ。


やめてくれ、俺の仮の名を呼ぶな。
俺は仲間じゃない。
俺は仲間じゃ…ない。






『ラビ、ラビ』







呼ぶな、呼ぶな。
呼ばれたら、心が揺らいでしまう。
俺はブックマンになるんだ。
仲間なんていらないんだ。







しかし俺は、心のどこかで気付いてる。

『ラビ』


そう呼ばれるのが心地いいと。
その声をもっと聞いていたいと。








ふと、遠くに一筋の光が見えた。


…よくある話。
あそこに向かって走れば、俺は生き返るのだろうか。


でも、生き返ってどうする。
仮初めの仲間と戦い、また心を痛めるのか?
人間なんて愚かな生き物なんじゃないのか?







『ラビ!』







しかし気付くと俺は、光に向かって走りだしていて。


あぁ…俺はとんだ大バカ者さ。





ただ、もう一度会いたくて。
仮初めの仲間に。
愛しいその声の主に…ー







――
―――
――――













…うっすらと視界が開(ひら)ける。


目の前にあったのは、愛しい君の泣き顔。












夢から覚めて












(君がいる世界なら、捨てたもんじゃないと思えたんだ。)












生きていく意味なんて、そんなものです。

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