オリまに小説

□奇妙な奴等
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「ねぇ」

「………」

「ねぇ」

「………」

「もう!ねぇってば!」

「え?」

俺はハッと我に返る。目の前にはとても不機嫌そうな顔。
覗き込まれているようだ。

「何で無視すんのさ?むむむ。気分が悪い……」

俺より低い背丈、幼さの残る顔、団栗を思わせる丸い瞳。
そいつの名前を頭の中で探すが、見つからない。
出て来ない?俺の記憶力は悪くないはずなのに……

「ちょっと、何か言ってよ苛つくから。
 それとそっちは僕を知らなくて当然だよ。
 会ったこと無かったからね、『斑猫先輩』?」

なんだ、俺の記憶力の問題じゃなかったか。良かった。
…って、ちょっと待て。

「今、俺の名前」

「知ってるよ。だって僕が奇術師だから」

「?奇術師?」

何処かで聞いたことがある……
奇術師、奇術師……… あ、これか?

「確か、『奇術師の海驢』」

「なんだ、知ってるんだ。やっぱり僕有名人〜」

不機嫌そうな顔から、嬉しそうな顔になる海驢。
俺が聞いた『奇術師の海驢』とは、
魔術のような説明できないほどおかしな忍法を使うおかしな忍者。
それにしても、こんなに若いとは……(いや俺も人のこと言えないけど)

「僕はこれでも10代半ばだよ。それでもそんなに若い?」

「…お前、まさか心の中を?」

「だからー、さっきも言ったでしょ?僕は奇術師なの」

「………もう良い、理解を放棄する」

「うん、良い判断」

海驢は右手を俺にゆっくり差し出す。

「?」

「握手。もうすぐ一緒に仕事することになるだろうから」

「…此処でどうしてそんなことが言えるかと訊けば」

「推測通り、だね」

俺は海驢の手を握る。

ぼとっ え?

「お前、手………」

落ちた。義手、だよな?義手なんだよな?
やべぇ、俺すっげぇ焦ってる……
だってよ、こんな所で古傷抉ったりしたら何か………

「く、くくくく………」 「?」

「なははは!面白い顔!」 「??」

何故か海驢は落ちた手に構わず腹を抱えて大笑い。

「ははは……これは義手とかじゃなく、ただの玩具」

手首から肩までの作り物(?)が出て来た。
そして、本物らしき腕が登場。

「はい、今度こそ握手」

「………」

俺はもう一度手を握る。

ぼとっ

「え?」

自然、間の抜けた声と顔になる。
や、もう一度落ちてくると思ってなかった……

「なははは!」

「…これも作り物、だよな?」

「当たり前!だって僕奇術師だよ?!
 腕無くすとか邪魔になんないとやんないしー!」

俺と可笑しな奇術師の初めての出会いは、やはり奇妙なもので、
その次に起こるおかしなことの前兆のような出来事だったのかもしれない。
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