星降る 外伝

□馬麟伝 「律」
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彼(ア)は凡庸なる童ではない

彼の笛の音は
研ぎ澄まされた刃の如く

何処までも鋭く
何処までも深く

そして儚く

それは月夜にのみ
姿見す金波の如く




「母様」

「なんです」

「私たちはいずこへ行くのですか」

「存じませぬ。
地の果つる処まで。
もしかすると天の川の支流まで」

「父上は、一緒ではないのですか?」

「ええ」

「何ゆえですか」

「……」

「……母様?」



母は答えず頬を伝う雫をそっと拭った。

母の涙を見た、最初で最後の記憶だ。


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