☆献上物☆

□君の心(5000キリリク)
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『しかしまあ、孫策殿は素晴らしい軍師を得たものですな』

ある日、孫策が言われた言葉。

紛れもない褒め言葉だけれど。

でも、その時にふっと湧いた感覚は、孫策の胸に、小さなしみを作ったかのように居残った。


『君の心』


「なあ周瑜。お前、俺の事どう思ってるんだ?」

「愛さない事が不可能な存在だと思っているが?」

「…………」

周りに人がいない、静かな草原。

久方ぶりに二人で遠乗りした先で、孫策は自分でも唐突だとは思う質問に対して即答された言葉が一瞬よくわからずに、きょとんと首を傾げた。それを見て、周瑜は今一度繰り返す。

「愛さない事が不可能な存在。……平たく言ってしまえば、愛せずにはいられない。私は君をそう思っているのだが?」

…1…2…3…

「ぉ、おま!おま!!な、何言って…!?」

たっぷり三秒は数えられるほど固まった孫策に満足気に微笑んでいる横で孫策は頬を真っ赤に染めた。本当に可愛らしい。彼は感情と表情が直結しているかのようだ。

周瑜はその隠し切れない笑みのまま、ずい、と孫策へと顔を近づけた。

「何だ?それとも君は私の事をそうは思ってくれてはいないのかな?」

「近い近い近い近い近いずぇ周瑜ーっ!!」

孫策の顔が更に赤くなる。本当に可愛い事この上ない。このまま口付けても良いですか?

とりあえずその衝動は何とか堪え、周瑜は一旦孫策から離れて元の位置に座り直した。

「して、何故君はそのような事を突然私に訊いた?」

軍の中で孫策がどのように思われているかなど、きっと空気でわかる筈だ。彼を嫌う者は一人としておらず、むしろ彼の周りには好意に満ちている。こんなにも人に好かれる者など他に例を見ない程だ。―――自分としてはソレが一つの悩みの種でもあるのだが。

「いや…その……な。うん…」

珍しく歯切れの悪い孫策に、周瑜は首を傾げる。いつもは思うままにものを言ってくれる彼が、一体どうしたというのか。

「何だ。言いたい事があるならば言えば良いではないか。私は別に君に何を言われたとしてもこの気持ちがそう簡単に変わるとは思えない」

淡々と語る中にも固い意志を見せてやれば、孫策は躊躇いながらも口を開いてくれた。

「じつは、さ…」



孫策の言葉を聞いた後、周瑜は軽く目を見開いてから、思わずクツクツと喉を鳴らした。

「な、何笑ってんだよ周瑜!?」

俺は本気で悩んでたのに!という孫策に、しかし周瑜は笑いを禁じえない。

『皆が周瑜を褒めてんだけどさ。俺……お前とちゃんと吊りあえてるのかな…って…』

思って…。と言ったときの、いつもとは正反対に自信の無さ気な孫策の顔といったら……

「おい周瑜!?笑うなって!聞いてんのか!?」

照れたように(実際照れているのだろう)叫ぶ孫策の横で、周瑜はひとしきり笑い終えると、右手で前髪を掻き上げた。口元にはまだ笑みが刻まれている。

「……孫策」

その眼が、軍に入ってから、否。入る前からも滅多に見ることが無い、心底から緩みきっているのを見て、孫策ははっと息を呑んだ。

「私は君を愛しているのだから、周りが何と言おうと関係はないのだよ」

限りなく優しい声音で語られる声が心地良い。

「それに、それを言うならば私の方こそ当てはまる」

「は?」

思わず聞き返す孫策に、周瑜は極上の笑みの中にも苦笑を交え、耳元でこう囁いてくれた。

「孫策。君は君が思っている以上に、軍内外からの評価が高いのだよ」


全くもって、気を抜く暇もないのだ。


そう付け足した周瑜に、孫策はにぱっと太陽のような笑みを浮かべ、周瑜の胸を軽く小突いた。


<END>


はい!遅くなりました!
受験後初めてのUPですね☆飢えてた分だけ甘甘です(笑)
5000hitありがとうございました☆
これはアリソンのみ煮るなり焼くなりお好きにどうぞ☆

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