小説【三國A】

□呉国の恐怖
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『呉国の恐怖』


「おーぅお前らー!しっかり力入れて訓練しろよー!?」

「若!」

「励ましのお言葉、ありがたく頂戴いたします!」

孫策はどれだけ忙しくとも(公務をさぼってでも)毎日必ず兵達の訓練に顔を出し、喝を入れる。

今日も例に違わず彼が訓練場へと足を運ぶと、途端に兵達の士気が上がり、ピンとした良い緊張感が張り詰めた。

孫策は兵達の敬礼に軽く受け答えつつ訓練をしていた部隊の将である甘寧へと歩を進めた。甘寧も孫策の方へと体の向きを変え、敬礼を取る。

「よお甘寧!良い感じじゃねぇか!感心だずぇー!」

「いやー。こいつら、若さんが来た途端張り切りやがりまして!っつーか、若さん。今日も公務サボったら流石に都督殿が怖くないっすか?」

昨日無表情で若の事を探してる都督殿、相当怖かったっすよ。と甘寧が言えば、孫策は『都督殿』に見つかった後の何刻も続いたしつこいお説教を思い出して苦虫を噛み潰したような顔をした。

「ぅげ。嫌なこと思い出させんなよー!!」

「ならば少しは反省してくれないか?」

「…………」

「…………」

「…………」

三人分の沈黙が続く。さっきまで耳元で響いていた兵達の活気溢れる雄叫びは遥か彼方、遠くでしているとしか思えない。

「し、周都督殿じゃねぇですか!」

いやー。こんな所で会うなんて珍しいっすねー!と、孫策よりもいち早く硬直を解くことに成功した甘寧が場を和らげるために周瑜に軽口を交えた挨拶をする。

対する周瑜は涼やかな笑みを浮かべて甘寧へと言い放った。

「これは甘将軍。今は訓練中の予定であったな。そんなときに孫策が邪魔をしたようで申し訳ない。今後このようなことがあった場合は遠慮なく孫策を無視してくれて構わない。彼は公務が溜まっているのでな。それに甘将軍も訓練中は訓練に集中するべきだ」

「…………はい………。すんません」

涼しげな表情と裏腹に所々グサグサと甘寧を責める周瑜に、甘寧はヒィ、と身を竦ませた。

その様子に同情の眼差しを送りそうになった孫策に、今度は周瑜の輝かんばかりの笑顔が向けられる。

「………孫策」

女性が見たら誰彼かまわず卒倒しそうな程に美しい顔に低い美声が加わる。一体全体どうしたらこんなにも良いもの揃いの人間ができるのだろうか?

現実逃避にそんなことを思っていると、周瑜ががしっと自分の肩を片手で掴んできた。最近は執務ばかりが注目されているが、元々彼は孫策といい勝負が出来るほどに武術にも秀でている。今のように本気に近い力を込められれば、はっきりいってかなり痛い。

「聞いているのかな?孫策?」

しかも、表情は輝かしいままだ。

(こ、怖ぇ…っ!)

「き、聞いてる…ずぇ?」

返事をすると、肩を掴む力はそのままに、周瑜の表情は笑みを深めた。

「ほう…。聞いている。と?それでは聞いていたにもかかわらず君はまた同じことを繰り返したのか。そうか。覚えていたにも関わらず、この前の何時間もの説教をまた私にしてもらいたいがためにわざわざ同じことを繰り返した、と?そうか。そういうことなのか孫策?」

既にこのあたりで孫策の隣にいた甘寧は失神しそうな程に青くなっている。彼にしては大層珍しい光景だ。ちなみにその少し離れたところでは偶然周瑜の余波を食らった一般兵が戦闘不能になっている。

「あ、しゅう…」

「言い訳無用だ孫策。来たまえ」

にっこりにこにこと美しい笑みのまま掴む位置を肩から腕に変え、周瑜はぐいっと孫策を訓練場から自分の室へとまっすぐに連れ帰った。その行く先々で戦闘不能者が相次ぐ。失神せずに正気を保っている甘寧はやはり将として優れているのであろうことがこの場をもってまた証明された。


「若さん……ご愁傷様……」


戦闘不能者があまりに多いので訓練を中断した甘寧の小さな呟きが、訓練場でポツリと落とされた―――…。


<END>


せっかく打ったプロットのを打とうとしたら何故か外れて外れてこう(全く関係ない話に←題名も変えました笑)なった!(プロットのはシリアス甘めだったんです)
ちょっと意味不明すぎるのでいつか打ち直すかもしれません。でもきっと打ち直しません(どっちだよ)。面倒なので(黙りなさい/
ごめんなさい)

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