小説【三國A】

□神様からの贈り物
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『神様からの贈り物』





「そ〜んさっく!!!」

「あー?」

俺の親友はキレイだ。

それに加えて頭も良いし、家も良いし、地位も良いし、人望も篤いし何でも出来るしで、俺の周りの奴らは口を揃えて『性格も素晴らしく、まさに周瑜殿こそ完全無欠の御方ですな』って言ってる。

俺もまあ、それについて大方は反論しないけど……。しないけど!でも、公瑾だって、そんなに完璧な人間じゃないんだぞ!?

それが、今まさしくその時なんだし……。

「あーもう可愛いなぁ私の伯符はっvV」

「あーはいはいもー勝手に言っててくれよ面倒くせぇなー」

「ふふふ、つれない顔も可愛いぞ伯符v私の伯符vV」

「いやお前のになったつもりなんて無いし」

「あーもう照れちゃって!本当に可愛いなあ伯符はっv」

ぎゅうっと後ろから抱きついてこうやって俺に熱い(むしろ熱すぎる)愛の言葉を囁く(むしろ叫ぶ?)公瑾は、本当にいつも幸せそうだ。何がそんなにも幸せなのかは知らねぇけど。

「―――…公瑾ってさー」

「ん?どうかしたか孫策?」

不思議そうに目の前で首を傾ける俺の親友。はっきり言って、同性の俺でもどきりとするような美しさだ。

顔は良いんだよなー。顔は。

俺はひとつため息を吐いて、そのキレイな顔をじっと見て言った。

「中途半端だよな」

「!?」

いや、そんなに目、見開かなくても。

だって本当じゃねぇか。

人前ではいっつもにこにこにこにこ人受けの良い顔しやがってよー。そのくせいっつも本心では笑ってないんだぜ?

俺と居る時―――今みたいに、公瑾がすっごく幸せそうに笑うときって、実はあんまり無いんだ。

笑い方、中途半端。

端から見ればキレイな笑顔だって事は分かるけど、本当の笑顔知ってる俺にとっては唯の中途半端な笑いにしか見えない。

「つまり、君は何が言いたいの?」

その上、俺に対しての呼びかけとかも……中途半端だろ。ソレ。

『伯符』って言ったり『孫策』って言ったり、たまに『君』って言ったり……まあ『君』ってのは俺の言う『お前』と同じだろーからどーでも良いけど。

「笑い方とか、呼び方とか……さ」

言ってみると、公瑾は見開いた中にも凄く真剣な―――本人は隠してても俺は公瑾のこういった時々鋭くなるところに気づくのが得意だ―――光が、不意に和らいだ。

「なーんだ。そんな事」

と同時に、何だかすっげぇ詰まらなさそうな顔してやがる。俺が何したってんだよコノヤロー。

「てっきり、私と伯符の関係をとうとうしっかりとした物にしたいという事かと思ったのに……」

「いや意味わかんねーからソレ」

すかさず突っ込みを入れてやると、それだけでも周瑜はとても嬉しそうに顔を綻ばせた。

「何でもないよ、伯符」



ああ、この顔だ、って、思う。

俺は、公瑾のこういった、ふとした瞬間の『本当の笑顔』が好きなんだ。

こういったのに、俺は自分でもおかしいと思うほどに、弱い。

何となく黙っていると、公瑾は、本当に男なのかと疑いたくなるようにキレイな手をこっちに伸ばしてきた。

訝しむ俺に、公瑾はやっぱり幸せそうに笑って言うのだ。

「伯符。一緒に、草原に行こうか。久しぶりに、ね?」

その手を握ると、女みたいと思った手は、やっぱり男らしい骨ばった手だった。

「……おぅ!」


良いんだ。

俺は、こんな中途半端で、でもこんなにも俺のことを想ってくれてる、公瑾が、何よりも好きなんだから







 『周瑜公瑾』という、神が丹念に生み出してくれた、神からの贈り物―――。俺はこの時だけは、『神サマ』を信じたんだ―――…。


<End>

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