小説【三國A】
□遊びに行こうっ!
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『遊びに行こうっ!』
「なーなー周瑜ー。お前、そんな服着てて暑くねーのかー?」
「いえ別に」
季節は夏。
今年の夏は例年よりも気温が高く蒸し暑い。
呉国の皆が暑いと嘆き薄着になる中、唯一人、周瑜だけが例年通りの―――生地は夏用だが長袖である―――服で黙々と仕事をこなしていた。
先ほどの孫策の問いにも涼しげな顔で答える周瑜に、孫策が化け物でも見るような視線を送る。
袖なしの自分でさえ汗が止まらないのに、この義兄弟の整い過ぎた顔には汗一つ浮かんではいない。まるで彼の周りにだけ涼しい風が吹き纏っているようだ。
「周瑜ー」
「……」
さらさらと書類を仕上げる音のみの世界に、孫策が割り込む。勿論返事は無い。
「なー周瑜ー」
「……」
またも返事は書をしたためる音のみらしい。まあ最初から期待などしてはいないが。この何でも出来る義兄弟は一旦仕事を始めると一気に気の遠くなるほどの量を仕上げるまで他の事には目もくれない。(そして数人がかりで数日かかるものを一人で片付けてしまうのだ。しかも直すところもなく完璧に。よって彼の非人間説が呉に広まりつつある)
「しゅ・う・ゆー」
しかし自分が懲りずに何度も呼びかけていると、時々。本当に時々だが、それを中断してまで顔を此方に向けてくれることがあるのも、知っている。
期待せずに周瑜をじいっと見ていると、やがて観念したように周瑜が溜息を吐いて顔を上げた。
「……何」
「暑い」
自分が即答したとたん、周瑜のこめかみに青筋がうっすらと立ったのが見えた。が、あえて見えていないふりをする。
せっかく周瑜がこっちを見てくれたのだ。そんな青筋なんかに怖がっている暇などない。
上機嫌で周瑜を伺っていると、彼はおもむろに再び溜息をついた。
「……君もいい加減仕事をしたらどうだ?」
「嫌だ。暑いしやる気でねぇもん」
「では……」
「よし!遊びに行こうずぇーっ!」
「……はぁ!?」
有り得ない。何を言い出すのだ。とでも言いたげな顔をしている周瑜にニカッと笑いかけると、孫策は周瑜のすぐ傍に備え付けられていた窓枠に手をかけそのまま飛び降りた。
「ちょ、孫策っ!!」
慌てて窓枠に駆け寄る周瑜に、孫策はにへらと嬉しそうに手招きした。
「ほら!周瑜っ!!遊ぼうずぇーっ!!」
その様子に、周瑜は一瞬珍しく呆けたような顔をしてから、すぐに苦笑した。
「……まったく。君は一体今年で幾つになったのだ?」
言いながら、窓枠に手を掛け、孫策同様軽やかに外へと身を投ずる。
その口元には、はっきりと楽しそうな笑みが刻まれていた―――…。
<END>
瑜策は幼年時代から策が瑜を誘ってお屋敷抜け出して遊んでいたと思っています☆☆
久々の感覚に胸躍りながらサボりに走る二人が書きたかったんです(笑v)
(……あ。窓から身を投ずるって、別に身投げとかではなくて勿論その後ちゃんと華麗に着地して駆け出してますよ?二人ともv…一応補足です[笑☆)