小説【三國A】
□知りたい答
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誰にだって渡さない。
だって、彼は私の『唯一』だから―――…。
『知りたい答』
「ねぇ伯符」
「ん―?」
声を掛けるとすぐに応える、その声はまるで私に安心しきっていて…
「もしも私が実は女性だったと言ったら貴方はどのように思いますか?」
「………」
「………」
互いに少しの間黙り込み、じっと互いの目を見つめる。
「……ぇ…、お前!女だったのかっ!?」
「そんな訳無いでしょう。例えばの話です」
驚きに目を見開き肩を掴み、半ば叫ぶようにして訊く孫策に周瑜は冷静に対応した。別にコレが本当に訊きたいという質問では無いのだ。
どことなくヒンヤリとした眼で自分を見る周瑜に、孫策は「あー。まぁそうだよな。水浴びのときも思えばお前男だったもんな」などと呟いて眼を逸らし、更に「んー…」と少し悩む素振りを見せてから、ニパッといつもの太陽のような笑みをこちらに向けた。
「今とそんな変わんねえんじゃね?やっぱ、好きなもんは好きなんだから、お前が何だろうが関係ねぇよ!」
(ぇ…好…!?伯符が…!?私を…!?)
自分は伯符が好きだ。勿論友としてもだが、それ以上の想いを抱いてしまっているのにも疾うの昔に自覚している。…が。
(まだ告白はしてない……よな?)
柄にも無く心中動揺する周瑜だが、顔には出さず、態度にも出さずににこりと微笑んで礼を述べつつ次の算段を考える。
(伯符がこのように言ってくれるということは…本題に多少なりとも自然に繋げる事が出来そうだな…)
そこまで考えると、周瑜はいつも人々に『人当たりが良い』と言われる笑みを作って更に尋ねた。
「そういえば、袁尚殿が男色家であると聞い…」
「ぃいいい"っ!ち、ちょっと待て!!頼む!!それ以上言うな公瑾!!寒気が!悪寒が走るっ!!」
「……?」
いつもの自信に満ちた彼からは想像もつかない程に怯えた顔で自らの肩を抱き、ガタガタと震え出す孫策に疑問を抱きつつ、そっと顔を覗き込むと、彼は顔を蒼くしながらも理由を教えてくれた。
「あいつ…あいつ……!俺に可愛いとか言ってきやがった…!」
―――…ピシ。
周瑜の笑みが一瞬で凍る。
まさか―――…。
「そんで!その後何か親父に俺の事褒めてくれたのは良いんだけどょ!?あいつその間ずっと俺の肩抱いててよ!?時々指がこう…!首筋辺り撫でてきて…!」
余程気持ちが悪かったのだろう。孫策は震えを止める事無く何ともおぞましげに語る。そしてその話が進むに連れて、笑みのまま固まった筈の周瑜の眼から段々と笑みが消えてゆく。
「それは……恐ろしかったでしょうね…」
そう言って、震える孫策をあやすようにそっと優しく抱きしめると、嬉しい事に彼はぎゅっと自分の服を握ってくれた。……本当に可愛いなぁ伯符は…v
「男色家なんて…!男色家なんて…!大っ嫌いだ!!」
―――…ピタ。
一瞬、孫策をあやす為に彼の背を一定のリズムで軽く叩いていた手が思わず止まってしまったが、すぐに周瑜は何事も無かったかのようにまたそれを再開した。恐らく孫策には少し叩くリズムが狂っただけのように思われただろう。
「そうですね…」
知りたい答がわかった。
「私も男色であまり良い思い出はありませんし…」
ソレは、決して期待した答では無かったけれど……
最後にギュッと孫策を抱きしめて彼に顔を見られないようにしながら、周瑜は一瞬見るもの全てが凍り付くような冷たい笑みを浮かべた。
「私達のように、『友達』であれば、これからもずっと『好き』でいられますしね…」
孫策の耳元でそう囁いた後、周瑜は音は出さずに口を動かした。
『袁尚殿……貴方はきっと、いつか身を滅ぼすでしょうね……』
END
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因みに瑜は水浴びの際には策の半裸を不自然に思われない程度に凝視してると思います(笑)
…久々に打ったので二人らしく打てた自信がありません…。特に瑜…;