小説【三國】

□愛すべきヒト
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           『周瑜』
       君はそう、私の名を呼ぶ。
        それはいつも輝いて
          時に切なくて
  切り刻まれるみたいに、切なくて。哀しくて―――…


    だって、君はいつかは消えてしまうのだろう?
    私と共に……ずっと共にいるなんて、不可能だ。

       『俺達は、ずっと一緒だぜ!』

        それは、ただの言葉で。
      きっと現実になんかなりはしない


     だからこそ、こんなにも愛おしいのか。
     だからこそ、こんなにも恋焦がれるのか。
私を蝕む心は、今私をむしばんでいるこの感情は、何なんだろう―――?


         伯符。君だけを想う。
         伯符。君は、ここに。
       はくふ…君は、消えないでくれ
    ハクフ―――……愛しい愛しい、眩しい人




        やがて乱世は全てを飲み込む。
          憎しみ。憎悪。恐怖。
           忠誠。仲間。愛情。
            そして、命。


       全てを飲み込んで、残るのは、何?
私から愛しいあの人を奪っていって、その他に何を残す物があると言うのだろう。
      この乱世は、私たちを巡り合わせた?
      この乱世は、私たちを引き剥がした?
        ―――もう、どうでもいい
伯符。君がいなければ、私にとってのこの世界は、何も映らない
            色の無い世界
            音の無い世界
         君の無い、世界―――…。


        君の遺言も、そろそろ時効だ。
         私の身体が音をあげた。

         やっと……やっとだ。
         君に逢えるよ、伯符
      君は、出迎えてくれるだろうか?
       笑顔で誉めてくれるだろうか
   今まで良く頑張ったと、誉めてくれるだろうか?


   これからは、やっと、またずっと、二人で―――

         二人……だけで―――

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