小説【三國】
□君と星と・・・
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久々に戦いも無く、平穏に時が過ぎてゆく。
そんなのんびりとした時間を、久しぶりに琴でも奏でながら孫策とゆっくりと過ごそうかと思っていた周瑜は、しかし当の孫策に狩りを誘われた。
「なぁ、公瑾!行こうぜ!狩り!!」
そんな風に目を輝かせて言い寄る孫策をまさか断ることも出来ず、周瑜はにっこりと微笑んで是と答えた。どちらにしろ、孫策と共に居れる事に変わりはない。
喜ぶ孫策と共に仕度をし、すぐさま馬にまたがる。半刻もしない内に、二人が愛用している狩り場へと着いた。そして、今に至る―――。
「おいっ!公瑾!早く来いって!」
楽し気に声を上げて獲物を追いかける孫策に、周瑜はにっこりと微笑みながら馬を走らせて彼の方へと向かった。
「そんなに急ぐとそこの木にぶつかって馬から落ちますよ。伯符様」
―――どがっ!…どで!
周瑜が忠告した直後に、孫策は見事に木に正面衝突して馬から落っこちた。―――ちなみに、周瑜が忠告したのは孫策が木にぶつかるほんの数秒前だったりする。
周瑜は「あーあぁ」と感嘆とも呆れともとれる言葉を洩らすと、孫策のもとへと馬を進め、そこから地面に飛び降りた。まだ痛そうに頭を押さえてうずくまっている彼に声をかける。
「ほら。だから言ったでしょう?大丈夫ですか?伯符様」
「…え?」
あまりはっきりとした返事が返ってこない。これは結構強く頭をぶつけたか?
周瑜は面倒臭そうに盛大なため息をつくと、孫策の真ん前に腰を下ろした。もう一度、彼の目をしっかりと見つめ、言う。
「ちゃんと馬に乗る時ぐらい注意力を配って下さいよ。見てる方が怖いんですから。……聞いてますか?伯符様?」
だが彼はじっと周瑜を見つめたまま、キョトンと首を傾げるばかりだ。こう言ってはなんだか、これがなかなか可愛い。思わず抱きしめたい衝動をぐっと抑えてどうしたのかと相手の言葉を待っている周瑜の耳に、予想もしていなかった言葉が飛び込んできた。
「………伯符様って、俺の事?」
「―――――は?」
ぽかんと口を開け、周瑜は珍しく間抜けな声を出した。そんな彼に追い討ちをかけるように、孫策は続ける。
「姉ちゃん、綺麗な顔してんなぁっ!!!名前何て言うんだ?友達にならねぇ?」
「………」
周瑜は言葉を失い、ただそこには沈黙が降り立った。