小説【三國】

□授業中
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「……で、少子化政策が行われるようになった。わかったか?」
「異議有りっ!!」
 優しく。あくまで優しく教えてくれる社会の先生・呂蒙が『中国未来史』を教えてくれている最中、びしっと天高く挙げられた手と共に、元気な声が弾けた。
 齢十二歳。周ユ少年だ。
 普段は物静かな彼があまりに真剣に抗議の意を示すので、呂蒙は理由もわからず身を固くし、笑みを堅くした。
「……どうした?周ユ?」
 彼は下手をすると自分よりも頭が良いかもしれない。そんな彼に細かいところを突っ込まれたら、自分はどうすればいい?もし自分がわからないところを訊かれたら、自分は何と答えればいい!?さあ、考えろ呂蒙!これに答えられなければ、俺に教師という明日は無いぞ!?
 まるで初陣のようにがちがちに固まって緊張している呂蒙に、周ユは真剣な面差しのまま、一言告げた。
「『政策』など……断じて反対です!」
「………はぃ?」
 よく意味がわからない。が、周ユ少年の事だ。何か自分のわからない深い意味があるのかもしれない。
「『政策』がいけない……とは?」
 神妙に訊く呂蒙に、彼は今度はキーっと頭を掻きむしった。普段の彼にはあり得ない反応だ。いったいどうしたのかと呂蒙先生が見守る中、彼はヒステリックに叫ぶ。
「なぜっ!何故ここに伊達政宗が出てくるのですかっ!?許せんっ!断じて許せんっ!!露と消えよっ!!」
「!?」
 意味もわからず無想乱舞されそうになり急いで避難していると、周ユは未だ怒りが収まらないのかまだ肩で息をしつつ叫び散らす。
「何だ『政策』とはっ!?孫策とつるんで良いのは、私だけだーーーっ!!!」
「…………ああ、サイですか」
 もう放っておこうと決め込んで、呂蒙は他の生徒を別の外へと呼び出すと、青空教室をしていったのだった。

end★

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