蝉時雨


夏休み蝉時雨読みかけに終わった

モノローグもなく甘い恋物語

波打ちさえずりのように耳奥底までに響いてくる

嗚呼季節が変わっても鮮明によみがえる

恋焦がれ愛しき人は記憶のなかに消えていった

いつか夢見たことも今では遠き幻

流れる雲と長い髪その合間に青い海

木漏れ日が白い素肌をまだらに照らしてる

夏休み蝉時雨読みかけに終わった

モノローグもなく甘い恋物語

青い海の砂浜で夢中で追いかけた

水平線の空を静かに染めた夕日

涙色と青い記憶が僕の奥底をさらっていく

最後の夜に見上げた空に溶けていく

最終電車の中で眠る君が僕の肩に寄りかかる

このまま君だけと時を止めていられたら・・

夏休み蝉時雨読みかけに終わった

モノローグもなく甘い恋物語

打ち上げ花火浴衣姿で人混みの中歩いた

夜の川辺の水面に浮かんで消えた花火

そんな瞳で見つめられたら笑顔で

さよならなんて言えないよ

ほら顔あげていつものように笑って最後まで・・

夏が終わり気が付けば読みかけに終わった

1ページ目の切れ端君と出会ったあの時

あの海の砂浜で漂った面影

キラリ流れた涙静かに染めた夕日

読みかけのままずっと

忘れられない物語





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