一発芸

□雲雀
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『……座のあなたは、ズバリおとなしい男性がタイプ! 言葉ではタイプじゃないと言いつつも内心守ってあげたいと思ってしまうでしょう』



とある晩。
ソファに並んで腰掛け「なんとなく面白そう」なテレビ番組をみていた雲雀姉弟の、

一歩間違えたら死人がでそうな会話です。



「ねえ」

「なにー?」

「姉さんはこの星座だったよね」

「うん、そうだね」

「…本当におとなしい奴が好きなの?」

「えー、どうなんだろ。別にそこまでタイプじゃないけど」

「嘘だ」

「え」

「姉さんは、草食動物の肩をよくもつから」

「え?!! そう、だっけ?」

「特に沢田綱吉と、僕に隠れて仲良くしてるよね」

「いや……! 隠れてってわけじゃ…」

「でも普通、好きじゃなかったら仲良くしないでしょ」

「え、あ、うん、そりゃそうだよ」

「うん、そうだよね。だからちょっと行ってくる」

「わ゛ー!! どこに行くの、どこに?!!」

「沢田綱吉の所」

「だめだめ!!」

「離して」

「だめ!」

「(ムッ)うるさいよ。姉さんのくせに指図する気?」

「や、『姉さん』だからこそだよ!! 弟の間違った道をただすのも役目なんです!」

「僕は何一つ間違っちゃいないつもりだけど」

「(えええ…!) ていうかね恭弥くん、わたしが元々おとなしい人がタイプであろうがなかろうが、あれはあくまで占いの結果であって、それが事実と結びつくわけじゃあないんだよ」

「へえ。それじゃ、今まで好きになった奴はみんなおとなしくなかったんだ」

「え? い、いやそういうわけでも……」

「……やっぱり、好きな奴いたんだ」

「う、そ、そりゃあ…わたしも一応女の子ですし…って、なんてこと言わせんの、姉弟間で」

「僕は聞きたくなかったけどね。でも聞いたらしょうがない、かみ殺してくる」

「ぎゃああああちょっちょちょちょっと待ってーーーーー!!」

「うん、待つからそいつの住所と名前教えて」

「ムリムリ!! 教えられないよ! だいたいそれは昔の話だから、気にしなくていいってば」

「昔でもむかつく」

「な…! そんなムチャクチャな…!」

「…………じゃあ、約束してくれる?」

「え?」

「もう他の男を好きにならないって」

「は? 何言ってるの、いやいや、それは流石にム」

「無理って言ったら町中の草食始末してくる」

「ウン! ワタシ、ガンバル! 努力スルヨー!!」

「……うん」


約束だよ、と弟は、そりゃもう嬉しそうに微笑みました。










欠陥愛情表現



カタコトで交わした理不尽な約束と弟の100%スマイルのせいで、しばらくの間 胃痛に苦しめられました。





拍手夢短文。

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