モラル

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 夜、ここに来てから始めた日記を書いていたら、カサカサと音がした。


「ん?」


 振り向いたわたしは、仰天して「ぎゃ!」と叫んでしまった。閉じているふすまが開く音なんてしなかったのに、いつの間にか政宗さんが立っていたのだ。それも、何故か鎧姿。


「・・・・・・?」


 いつもであれば、足を開いてあんな大声をあげるわたしを嘲笑する政宗さんは、黙ったままだ。真剣な表情・・・というか、無表情で立っている。なんかおかしい、おかしいよこれ。でも、相手が政宗さんなので、わたしはやっぱり嬉しかった。「どうしたんですか、わたしに会いに来たんですかっ」とニッコリ笑えば(効果はバツグンのはず!)政宗さんはコックリとうなず・・・どえええええ!?
 ちょっ待てやァァァ! こんな上手い状況があっていいの?! そうだ、これは夢なのよ名無しさんちゃん! もしくは政宗さんの陰謀! きっと慌てるわたしを存分に楽しんでから、HAHAHAって笑うんだ、そうに決まってる。ふふん、なるほどね!←自己完結
 政宗さんは無言でわたしの目の前まで来ると、かがみ、わたしをのぞきこむようにして 顔を近づけた。ワッワオ! 美形がドアップで拝めるなんて、アイムハッピー!(やばいテンションが高くなってきた!)


「むゎさむねさん(やべ、どもった) あ、あの、わたしの顔に何かついてます?」


 鎧を着てるから、これから戦に行くってことなのかな。でも夜なのに・・・。あれか、この間来た武田さん達が救援を求めてるとか? いや、それなら無言じゃなくてさっさと言って行けばいい。なんだ、なんなんだ本当!! ・・・・・・と考えている間に、わたしは気づけば地面に寝かされてました。もっと詳しく言えば、政宗さんに覆い被せられています。
 ま 、 ま さ か こ れ は ・ ・ ・ !


「これが本当の『コスプレイ』ですか政宗さん!!!!! えっちょっ、それならわたしが鎧を脱がせますわ・・・!」


 もはやどちらがオオカミなのか。

 政宗さんは相変わらず無言で顔を近づけて、わたしはハアハア言って(マジキモい!)、変な雰囲気のまま時間がすぎた。いつキスされるんでしょうか、やっぱ政宗さんだからディープかな!
 そして、そのへんてこムードがぶっ壊されたのは、政宗さんの第一声。


「名無しさん!!」
「「!!」」


 ・・・え!!
 床がギシギシとふすまが素早く開いた(ていうか吹っ飛んだ)かと思えば、小十郎さん達を従えた・・・・・・


「まっまさむねさん!!」


 何これ、何これ!?! 上に乗ってるのも政宗さん、廊下でこっちを睨みつけてるのも政宗さん!? やだこれ、政宗天国?!(心を読まれて小十郎さんに「死ね」と言われてしまったけど、無視!) でもこれって危ないんじゃなかったっけ!


「まさかドッペルゲンガー!? いけない政宗さん、見たら死んじゃう!! ってこれどっちが本物? 見分けがつかない・・・」
「Ha? 蹴り飛ばすぞ名無しさん、俺がそんな行動するわきゃねーだろうが」
「サディスティックなアナタこそ本物ですね!」


 いいもん、未来はどうなるかわかんないから!
 ・・・って スネてる場合じゃない。このニセ政宗から離れなければ。ニセ政宗は何が起こってもとことん無表情で、わたしをひたすら見つめ続けている。・・・あれか、キスしてくれるわけじゃあないのか(ニセとはいえガッカリ) まるで自分を見てくれといわんばかりに。


「Hey,そこの俺。バレてんだぜ、いい加減そこの女から離れやがれ」
「あっ、でも待ってください」
「what?」
「ニセ政宗さんのほうが積極的で わたし的にヒットかもしれブッ!!
「お前は俺だったら誰でもいいのか、アァ?」
「ま゛さむねさん、それ言葉的に矛盾してます・・・!」


 政宗さんが投げた物体が、わたしの顔にヒットしていた。な、何投げたんだ・・・とわたしが目を開けると、上にいたニセ政宗さんは消えていた。あれ、と政宗さんの方を見ると、なんとマサムネーズがガン見しあってました。
 さ、寒い。急にあたりの気温が下がっていく感じが・・・!


「......Do you want to die that much?(そんなに死にたいか?) どけっつってんだろ」
「・・・・・・」(無言+怒気)
「お二人とも・・・ま、政宗さん達・・・すストップ・・・・・・!」


 無理だ、本気で怒ってる政宗さんを止めるなんて(ぶっちゃけ小声でした、今の台詞) みんながみんな無言で、小十郎さんはすでに刀に手をかけていた。それを見て、わたしはさっきまでの臆病風が止んだ・・・気がした。とっさに立ち上がり、叫ぶ。


「や、やめてよ! わたしの部屋で殺しとかしたら、もうこの部屋に住めないっつーの! 幽霊とか本当は怖いんだから、その男は・・・・・・」


 全部言い終わる前に、ニセ政宗さんは動いた。といいますか、倒れました。そして あっけにとられる全員が見たもの。
 そのニセから ボワンと音がして煙が瞬間的に出て、あれっと目をこらせば、そこにいるのは、


「たたっ、たぬきいい?!!!!」


 ・・・・・・わあ、たぬきの化ける姿って生まれて初めて見たよ。
 混乱しきったわたしの脳裏に浮かんだのは、とりあえずこんな感激でした。









狸の恩返し
ちーとだが、いい夢見たぜ!by名無しさん

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