メント

□お酒はかけるものではありません、飲むものです
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「政宗さーん」


 わたしがへんてこな飲み物をのんで政宗さんとラブラブになった騒動の翌日。……といっても、どんな感じでラブラブだったのかは一切覚えてないし知らない。政宗さんが照れて教えてくれないのだ(ほんとにシャイなんだからもォ!) でも目をさました時に政宗さんがああやってくれたのはとっても嬉しかった。また味わいたい、というわけでつい先ほど物置小屋を探したんだけど、なぜか見つからない。もしかしたら政宗さんが持ってるのかもしれないと思って、今会いに来たんだけども。


「お邪魔しまーす、ところで昨日の飲み物、どこにいったか知りません?」

「唐突すぎるだろ。…知らねえな」

「えー…まいったなあ」

「…なんでそんなもん知りたがるんだ?」

「そりゃ勿論、飲んで政宗さんとラブラブに」


 言い終わる前に座布団を顔面にくらいました(一瞬息がつまった! 呼吸器ビックリしてたよちょっと!!) チッどうやら政宗さんは持ってても持ってなくてもわたしに情報を提供する気はサラサラないみたいだ。

 まーいいや、ここで政宗さんと攻防戦を繰り広げてもしょうがない。「またきますね、深夜に」とスマイルを浮かべて部屋を出ると(今度はダブルで座布団きたけど、避けれたよ!)、わたしはもう一度物置小屋を調査することにした。

 ………するはず、だった。


「ゲ!!」

「…なんだその顔は。まるで化け物に出くわしたような顔しやがって」

「なっ、そ、そんな思うわけないでしょ! 全国の化け物さんに対して失礼ですもん!」

「どの口がほざくんだテメェ!!」


 物置小屋の前に、小姑こと小十郎さんが立っていたのだ。早速 本音を滑らせたわたしは小十郎さんにガミガミと言われながら、チッどうしてくれようかこのオールバック、と考える。恐らく物置小屋を気にしすぎたら小十郎さんもそれに気付いて、昨日のことが芋蔓式にバレるかもしれない。政宗さんに「他言無用だ」と約束(という名の脅迫)された以上、たとえこの鬼姑でも白状するわけにはいかない。ていうかむしろ姑だからこそ、白状しない、できない、殺されるから!


「……おい」

「!? はっはい!」

「…何、さっきから物置 気にしてんだ」

なっにを?! すいませんわたし意味わかんないんですけど何これもしかしてアレなのナンパですか? 悪いけどわたし、政宗さん以外の人間に興味ありませんから!」

「刺すぞ」

「すいませんでした」


 斬るぞとかじゃなくて刺すっていうのがなんとも危ない。刺すって、しかもめっちゃ本気の目だし…!

 ……兎にも角にも、物置を凝視しているわたしに気付いた小十郎さんは、やっぱり小屋に興味をしめした。


「そういえば、こいつの扉が開きっぱなしだったのァ…お前か」

「えへ、すいません。ちょっと急いでて」

「なんで急いで物置に入る必要がある。捜し物でもあんのか?」

「はい、見つけにくい物なんです。鞄の中も、机の中も、探したけれど見つからないのに…」

「うぜえ」


 フフッフー、と歌うわたしのつむじに拳骨をくらわせると、小十郎さんは物置の扉を思いきり閉めた。


「少なくともこんな所にお前の捜し物はねーことは確かだ。オラッ、散れ」

「散れってわたし一人なんですけど」


 何それ、わたしをさらに分散させろと!?と突っ込みたいのも山々、すいません、元々そこから連れ出した物が迷子なんですと告白したいのも山々だった。でも小十郎さんにはそう言っても無駄だから、ここは大人しく引き下がることにした。別に今じゃなくてもいい。小十郎さんがここにいないのを見計らって来ればいいだけだし。

 その時、物置小屋の中で音がした。ボスン、という音だ。先に動いたのは小十郎さんで、扉を思いきり開け放った。ビキ!と扉が悲鳴をあげたことには同情したよ…(ああ、扉の破片が…!)


「…なんだ」

「あー! あったーあ!!」


 どうやらさっきの音は、あの瓶がどこからか落ちた時のようだ。突然出現した瓶に、小十郎さんは拍子抜けした表情だけど、わたしは目を輝かせて駆けつけると、それを手に取った。これでまた政宗さんとイチャイチャに…!


「……あれっ?」


 手にした時、違和感があった。なんだろう。今更だけど、この時代は電気なんて便利なものはないので、物置は本当に薄暗い。そんな中で瓶の違和感を確かめようとしてもわからない、それで確かめる為に明るい外に出ようとした時、突然上から手がのびて、それを取り上げられてしまった。言うまでもない、小十郎さんだ。わたしがやけにハイテンションなのを怪しんでるんだろう(ちくしょう正解だぜ!)


「何 勝手にてめーのモンにしてんだ。返せ」

「えっちょっと、やっ…やああだあああ〜〜!!!」


 小十郎さんの手に渡ってしまった瓶をなんとしても取り戻したいわたしは、年齢無関係で全力で抵抗した。しょうがないじゃない、愛の力は巨大なのだから! 政宗さんに愛される為ならわたしなんでもやるわ! やってやりますともっ!!


「待って待って小十郎さん!! 一口でいいからちょうだい、一口!」

「ふざけんな、ここにある酒は全部 政宗様への献上物だ。間違ってもてめーみてーな女に飲ませるもんじゃねえんだよ」

「ちょっと小十郎さん、わたしはその妻になる女ですよ! いーじゃんちょっとくらい、ほんと、口につけるくらい! もしかしたら思わずゴクゴク飲むかもしれないけど!」

「尚更渡すわけねーだろうがァ!!」


 ああああ待って、小十郎さァァァん!!

 そう絶叫する時、わたしは小十郎さんしか見てなくて、一歩踏みだした時、足下の床のちょっとした段差に気付く事ができなかった。そんなわけで勢いよくつまづいたわたしは、小十郎さんの手によって留まることができたけど、


「あっ」


 瓶が小十郎さんの手から放れ、空中を舞うと同時に、ひゅんとわたしの頭上に降ってきた。いや渡してほしいとは言ったけど、こういう渡し方は望んでないな、うん。


「チッ!」


 舌打ちした小十郎さんは、わたしの頭を手のひらでわしづかむと、ブンッと投げた。く、首がァァァァァァァ!!


 
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