ハラス

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 ここでござる、と、お風呂に入る前に連れてこられた部屋は、広くてあったかくて、どこか奥州と似ていた。まあこの時代、洋室がないわけで、和室であればどこも同じように感じるのだ。ここが、お祭りの日まで(というか奥州に帰る日まで)お世話になる部屋だ。
 本当に甲斐に来たんだ、と、ちょっと奥州をさみしく感じたけど、あの鬼姑を思い浮かべたとたんそれが吹っ飛ぶ。もおおおおなんなのよあの男はァァァ! 思い出したらまた腹立ってきたわ!! 政宗さんの側近よりヤクザの筆頭のほうが明らかに向いてるような顔してさ!


「真田さん、武田さんに仕えていて本当に良かったですね」
「? それは、勿論でござる!! この命燃え尽きるまで 甲斐を守り続ける所存!」
「・・・真田さん見てると、ああ、戦国だなって思いますよ」


 はてなマークを浮かべる彼に思わず苦笑いする。だって今までいた所は、英語が常に飛び交うし(政宗さんのせいで)戦国というよりヤクザの世界にいると思うし(ヤキいれるぞ!!なんて普通言わないでしょ!)・・・。奥州ってすごい特殊なのかもしれない。


「名無しさん殿の部屋でござる、自由におつかいくだされ。それから佐助が、付きの者はいかが・・・」
「ああああいらないですっ! 一人でできますから、奥州でもそうでしたし」
「そうでござるか。名無しさん殿はおなごだというのに、ずいぶんと自立してござるな」


 男子のようだ、とニカッと笑う彼に悪気はないんだろうと思う。これが政宗さんや小十郎さんだったら悪気どころか悪意100%なんだろうけど。やっぱ人柄って大事なんだなあ。




 
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