ハラス

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 これが本当の「ケガの功名」と呼ぶべきなのかわかんないけど、とりあえず結果オーライ! 見事巾着袋を取り戻したわたしたち。ただ、それからしばらくタヌキちゃんは長曾我部さんに噛みついたままだった。きっと巾着袋返すかわりに、仕返しをしたんだと思う。・・・すごいな、さすがタヌキちゃん。

「世話んなったな、名無しさん、その他の野郎共」

 そして目的を達成した長曾我部さんは、翌日の早朝城をおいとますることにした。手にはしっかり(と洗った)巾着袋が握られている。中にはあの時の真珠も入ってるから、無事に元通りだ。そんなわけでミッションも終わりなんだかスッキリしたけど、少しさみしかった。

「おい長曾我部、城の主を野郎共にまとめるたァいい度胸じゃねェか」
「おうすまねェな独眼竜。だが今回 一番に協力してくれたのは名無しさんだぜ?」
「アニキ・・・」

 しんみりしてしまうわたしに気づくと、長曾我部さんが一歩近付いた。図体のバカでかい長曾我部さんの手のひらは、やっぱりでかい。わたしの小さな頭を軽く握ると、わしゃわしゃと髪をかきまぜてくる。それは冗談ぬきでとても乱暴で、彼が手をはなせば寝起きの髪型と化していた。ギャーせっかく朝っぱらからセットしたのに!

「何するんですかー! やっぱアニキ鬼ですよ、鬼!」
「はっはっは、おめーには心気くせェ顔なんざ似合わねェや!」

 大きな口を開けて思う存分に笑うと、長曾我部さんは馬に飛び乗った。そしてどうどう、と馬を落ち着かせたあと、わたしと視線をばちっと合わせる。また何かからかうつもりかな、と思っていたけど、今度は違った。ニカッと笑いながら、「俺と一緒に海へ出ねェか」と言っ・・・・・・・・・・・・はい?!

「ええ!?」
「・・・ックック・・・! やっぱ名無しさんはおもしれーなァ」
「!!(や、やられた)」

 やっぱりからかわれたわたしは、政宗さんの腕に思いきり抱きつくと、長曾我部さんにあっかんべーをする。ふふん、残念でした!

「おあいにく様、わたしは政宗さんと一生を添い遂げる運命なんです! だから長曾我部さんは海と一生を添い遂げてください! ねっ政宗さん☆」
「おい小十郎、今stalker宣言された気がするんだが」
「政宗様、今に始まったことではございませぬ」


 厳しいな・・・! そううなだれるわたしに「名無しさん!」と呼びかける長曾我部さんは、今にも馬を走らせようとしている。とっさに顔をあげたわたしは、「アニキ」の笑顔がまぶしかった。

「いい嫁になれよっ!!」
「・・・はいっ!!」









本音は冗談の類に入って
アニキ編終了。アニキはアニキのままでいるといいよ!

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