ハレテハレテ

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 翌朝、わたしはバチッと目が覚めた。悪寒を感じたのか悪夢で夢が覚めたのか(沖田くんと神楽ちゃんにダブルで攻撃された)わからないけど、悪い予感はとってもする。そして案の定、1階から衝撃音がした。わたしの寝室は2階で今までここにいたから、1階で何が起こったかわからない。もしかして泥棒・・・いや、この村にそんなことする人はいない。酷い人たちではあるけど、そこまで墜ちてない。と、思う。ちょっと自信ない。とりあえず、階段をゆっくりと降りる。階段は玄関につながっていて、もし訪問者か何かが玄関にまだいたらばっちり遭遇してしまう。いませんようにいませんようにって い た ー ! しかも訪問者は


「ギャアアアアアア!!!」


 早朝から迷惑な悲鳴をあげると、一目散に2階にかけあがった。かけあがる前に見たけど、あの人・ヒバリさんがドアをぶっ壊したのがあの音だったみたい。普通にノックしろよ!! なんでそんなに暴力的なのしかも女の子の家に朝からって・・・ありえねー! 寝室に入ったらすぐにドアを閉め鍵をかけた、けど無駄だった。ホッとして、設置してある電話に手をのばしたらさっき閉めたはずのドアが吹っ飛ばされてヒバリさんがいるではないか。何これすげえホラーよりこえええ! この人13日の金曜日好きだね絶対! チェーンソー持ってなくて良かったよ「ヒバーカ」! ・・・と心中ではさんざん言うけど実際は何も言えずガタブルと震えるしかない。


「なんで逃げるの」
「怖いからです! ていうかなんでドアいちいち吹っ飛ばすんですか?! 修理代請求し・・・いや、やっぱやめます(刃向かったらわたしが修理される状態になってしまう)」
「吹っ飛ばすつもりはなかった。入る前にノックしたけど、返事がなかったから」
「今何時だと思ってるんですか! 5時って・・・! 起きてるわけないでしょうが。それに返事がなかったんなら諦めてくださいよ」


 ヒバリさんが遠慮なくずんずんと近寄ってくるので、わたしもシャカシャカと後ずさる。いたっ、と振り向けば、いつの間にか壁にまで追いつめられている。やばい、わたし本気で殺されて死ぬかもしんない。まさかこんなことで死ぬなんて、人生って恐ろしい。


「・・・・・・」
「・・・・・・あの、とりあえず、・・・トンファーしまってくれません?」
「指図はうけない」
「(こんの男ォォォォ!!!) じゃ、じゃあ、用件を・・・」
「彼女連れてきて」
「はい?」
「昨日の、男みたいだった彼女」


 それはもしや神楽ちゃんだろうか。でも昨日ヒバリさんと会ったのはわたしと神楽ちゃんだ。わかりました、と立ち上がろうとした時、わたしはようやくパジャマ姿ということに気づいてしまった。うおわ恥ずかしい! 着替えなくちゃ!


「ああああのっ、着替えてきますね!」
「駄目。さきに呼んできて」
「・・・いや、すぐ着替えま」
「咬み殺すよ」
「いってまいります」(即答)


 パジャマかよ、パジャマで村うろつくのかよ。でもこの人が怖くてわたしは大人しく従うしかない。立ち上がって歩き出そうとした直後、また1階で音があった。えっ、とびびるわたしをよそにヒバリさんがトンファーをちゃき、と構える。階段をあがってきたのは、


「土方さん! た、たす」
「名無しさんお前朝からうるせーんだよ! せっかくマヨネーズ王国の入り口が見つかったはずがテメーのせいでー台無しになっちまったじゃねェか! 覚悟できてんのかあァ?!」
「ひいいいい!! ちっ違います土方さんあれだ こっ この人が来たから反射的に絶叫しちゃったんです!!」


 助けに来たかと思ったら苦情言いに来たのかよ! と泣きそうになったけど、結果オーライだ。土方さんは睨む対象をわたしからヒバリさんにうつした。・・・ああ、なんてシーンだろう。苦手な人が2人とも同じ部屋にいるって本当に寿命が縮む。もっと優しい人はいないわけ? あ、でも優しいだけだったらすぐこの村から出ていくだろうな・・・。


「何? きみ強いの?」
「だったらなんだよ。お前のせいで夢が本当に幻になっちまったじゃねーか」
「土方さん夢は夢のままです」
「うるせー黙れ」


 瞬間、ヒバリさんはトンファーを突き出した。それを土方さんが白い刀で応える。ガキィン、という鋭い金属音が耳に痛い。その直後、両者ともものすごいスピードで相手に武器を振った。火花が散り、わたしはこれ以上その場におれず、抜き足差し足忍び足の状態で部屋から出ようとする。


「名無しさんさん」
「!!(ほぎゃあああ声が今まで以上に低い!)」
「彼女呼んできてね。じゃないと、本当に 咬み殺すから」
「わっわかってますよ!」


 一応「さん」は付けるんだ・・・と思ったけど、マナー違反者に代わりはない。今すぐツナくんの村に行って引き取ってもらうように言おうかと思ったけど、逆に「いや、ヒバリさんそこ気にいってるみたいだから居させてあげて!」と押しつけられそうだ。しょうがない、ここは神楽ちゃんに退治してもらって帰ってもらうしかない。わたしは玄関で少しの間ドアに合掌し、外に出た。


「お前、名無しさんの知り合いか?」
「違う。ただのふっかつ村の訪問者」
「訪問者がなんでここの住人に命令してんだ?」
「彼女に一番面識があったのが名無しさんさんだったから」
「・・・・・・意味わかんねーな」
「わかってもらおうなんて思ってない」
「そうかよ。・・・・・・テメー何様だ」




 
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