過去拍手小話
□一本道
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「近藤さんは、本当に沖田隊長には甘いよな…。」
周りの人間は、口を揃えてそう言うが、沖田は、案外そうでもないと思っている。
まぁ、勤務中にサボったり、攘夷志士捕縛でうっかり民家を半壊させたとしても多少の事は目をつむってくれるのは、近藤だ。
その分 副長である土方が「いい加減にしろ!」と声を荒げるが
当の本人はそれを怖いなどと思った事は一度もない。
しかし
「総悟はどうしたい?」
優しく訊ねられるその一言が沖田は実は怖い。
近藤はいつだって自分を大切に想い、自分の意見を尊重してくれるのが…。
(俺は近藤さんの命令だったらどんな事だって聞きやすのに…)
小さい時から近藤は、愛弟子で本当の弟のように可愛がってくれたが
それとは別に一人の人間として接してくれる部分があった。
近藤が武州を離れ江戸に旅立つ決意をした時
「総悟はどうしたい?」
と、しゃがみ込み幼かった自分に目線を合わせて優しく尋ねたのを思い出す。
もし唯一の肉親である姉の元に居たいと言っていれば近藤は微笑んでそれを
受け入れただろう。
まぁ、他の人間だったら幼い子供を江戸に連れていくなんて事はしないだろうが…。
選択肢をいつだって自分にくれる。
それが怖い
そして嬉しい。
でもやはり怖いのだ。
「総悟はどうしたい?」
自分に一番厳しいのは、近藤さんなんじゃないか?
沖田は、時々そう想うのだ
(俺は近藤さんとずっと一緒に…)
あの頃より随分と逞しくなった自分の体とは違い
その思いは変わらないままだ。
だから
そう
選択肢などいらない。
-END-
(内容がなくてすみません。)