過去拍手小話

□無二の事情
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局長室で繰り広げられる二人の男の様子は、何とも滑稽だった。




「近藤さん…いい加減にしてくれよ。」


土方が呆れ顔で下を見ると、彼の膝には、上司である近藤がつっぷして泣いていた。

「なんだよっ!その冷たい言い方!トシは、モテるからお妙さんにこっ酷く振られた俺の気持ちなんか分からないんだっ!」

グズグズと涙と鼻水で汚い顔を近藤が上げたので、土方は
軽いため息をついてから彼の机の上からティッシュを数枚取り、それらを優しく拭いた。

「俺はそんなにモテるわけじゃねーんだって!その証拠に俺だってずっと女がいねーだろ?」

「…う、うん。」

「だから近藤さんとは同志だ。ほらとりあえず色恋なんて忘れて溜まった書類を…」


土方が上司に仕事をさせようと、話を進めた所で



「副長!今日も副長宛のファンレター沢山届いてますよ〜?これどうしますか〜?」




空気の読めない男の甲高い声が廊下に響いた。




「やっぱりモテるじゃん!トシの嘘つきぃぃぃぃっ!」

畳につっぷして近藤は再び泣き始めた。




(山崎…コロス!!!!!)






『無二の事情』




監察の青年を一通りボコり、中庭に蹴り飛ばした後、土方はパタンと障子を閉めて座布団に座りなおした。

「……」

正面から痛い位の視線が送られてくるので、気まずそうに土方は顔を上げた。

「近藤さんあの…」

「トシ、それどうするの?」

近藤は先ほど山崎が運んできたダンボールに入った手紙の山を指差す。

「あ?これはもちろん捨てるに決まって…」

「やっぱトシは分かってない!
モテない男の気持ちも!これを書いた女の子達の気持ちも!」

「近藤さん…アンタ俺にモテて欲しいのか欲しくないのかどっちだよ?」

「どっちもヤダ!」

「あのなぁ…」

子供のように頬を膨らませる近藤にどうしたものやらと、土方は懐からタバコと取り出し火をつけた。

「……」

「……」

しばしの沈黙の後、近藤は俯きながらぼそぼとと喋り始めた。


「俺はトシがすげぇいい奴だって知ってるから、女の子がお前を好く気持ちも分かる。
それで良い人が見つかったら一緒になって幸せになって欲しいとは思ってる。
でも親友として、男として、やっぱりそれは寂しいっていうか…」

近藤がグスッと鼻を啜ったので土方は新しいテッシュを手に取り
またそれを拭いた。そして今度は深いため息を吐き出す。

「あのな近藤さん、俺が女にモテるなんて到底無理な話なんだよ」

「?…どうしてだ?」

「お茶だ、映画だと女と浮かれ楽しんでいるより…こうしてアンタの泣き顔拭く方が
良いなんて知ったら、大抵の女がドン引きしちまうだろ?」


優しく微笑む土方の背後から



「いや…女じゃなくてもドン引きですけどね。」


いつの間にか復活していた山崎の呟きは、運悪く障子の向こう側に聞こえ再び中庭に蹴り飛ばされたという…。



 -END-

(ギャグというかBLっぽい?でも原作でもこんな感じだと思いたい☆近藤&土方
281訓読めてないのですが、情報を参考にさせて頂きました。)

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