過去拍手小話

□誕生日前夜
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「ささのはさーらさら〜♪」

縁側に寝転がり、シトシトと降る雨を眺めながら沖田は、愛刀・菊一文字(RX-7)に搭載された音楽プレイヤーで童謡を聴いていた。

いかにも楽しくないといった表情で。

沖田の横には、庭から一時避難された見事な笹が飾られており、葉には隊士が書いた色とりどりの短冊がぶら下がっていた。

『ミントンがもっと上手くなりますように!』

『ヤクザVSエイリアンの続編が放映されますように!』

『屯所をみんなが清潔に使ってくれますように!』

(みんな好き勝手な事、書いてやがるねィ。)

手元にある青い短冊に書かれた
『今年も誕生日 近藤さんと過ごせますように』
という汚い文字を見て
(勝手なのは俺も一緒か・・・)
と沖田は、短いため息をついた。

無駄な空想は止めようと愛用のアイマスクをつけて寝ようとした時・・・


「総悟。」


出張に行ってるハズの近藤が、自分の顔を
覗き込んできたので、沖田は慌てて上体を起こした。

「こ、近藤さん!?アンタ、なんで居るんですかィ?火星に出張じゃ・・・」

「そうなんだけどね。とっつぁんに無理言って早めに切り上げてきちゃった。
お前の誕生日に間に合うようにさっ!」


その一言に沖田は、複雑な表情で眉を顰めた。

「近藤さん・・・俺はもう子供じゃねぇんですぜィ?
誕生日に一緒に居てくれなくったって怒りはしやせん。
それに今回はとっつぁんも行く重要な仕事だったハズだ。
俺の誕生日とそれと、どちらが大事かちっとは考えてみなせェよ。」

「うん。だからこっち来たんじゃねーか。」

沖田の説教は、まるで通じないといった感じで近藤はニコニコと笑顔で答えた。

「お前と仕事・・・もしどちらか大事かと聞かれれば間違いなくお前をとるに決まってるじゃん!
逆にさ、教えてくれよ。俺に総悟より大事な事があったらさ。」

乱暴にグリグリと頭を撫でられ

「だから・・・子供扱いは、やめてくだせぇよ。」

と、文句を言いながら総悟は恥かしそうに俯いた。


そして軽く握り締めてしまった短冊を見て
彦星と織姫にちょっとだけ感謝をしたという。



END



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