過去拍手小話

□痛みの後は・・・
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『痛みの後は・・・』


「よ〜!総一郎くん。今日も男前だねぇ。」

「・・・旦那、その嫌味、結構シャレになりませんぜィ。」

屯所の庭に無遠慮に侵入してきた3人組に平然と受け答える沖田の左頬は、可愛そうな位膨れ上がっていた。

「・・・でオタクのドメスティックバイオレンスな局長さん、元気?」

「それもシャレになりませんねィ。」

ムスっとした表情で沖田は銀時を睨みつけたが銀髪の男はそれをニヤけ顔で返した。

「って、それ近藤さんがやったんですか!?」
「って、それゴリがやったアルか!?」

新八と神楽は同じタイミングで声を上げ、マジマジと沖田の顔を見た。

「・・信じられない。」
「・・信じられないアル。」

この二人は、近藤が沖田というサド青年に非常に甘いのを知っている。
だが、先日起こった転海屋の一件を細部までは知らない。
(銀時が面倒がって、詳しくは話さなかったからだ。)

なので驚きも一塩だ。


「俺も本気で殴られたのは・・・初めてかも知れねぇなァ。」

沖田はしみじみと呟いた。

普段の近藤は、沖田が多少の無茶(それ以上の時もあるが)をしても
笑って許すか、怒ったお母さんがやるように頭をグリグリとする程度だ

幼い頃は、悪戯が過ぎると尻をパチンと叩かれた事はあるが
顔を拳で殴られるのとはワケが違う。

「痛そうですね・・・。」

新八が心底同情したように声をかけると

「仕方ねぇや。これはあの人から俺への愛のムチだからな。」

と、沖田は、またもや平然と答えた。

「あ、愛のムチ?」

「そうでィ。」

「・・・・・・。」

なんとツッコミを入れてよいか困惑する新八から視線をずらし、沖田は、銀時が持っている小さな花束を指差した。

「・・・で?旦那、その花はもしかして姉上にですかィ?」

「ああ。まぁな、仏壇にでも飾ってよ。ねぇちゃんによろしく!」

白い花を受け取ると「どうも」と、沖田は軽く頭を会釈し
「んじゃ、仕事ありますんで。」と
さっさと屯所の中に消えてった。

屯所の庭に三人はポツンと残される。

「なんだ、総一郎くん・・・ねーちゃんがいなくなって
ちょっとはしおらしくなるかと思ったら元気じゃねーの。」

「ははっ、そうですね。」

「ノロケる位だから、アイツピンピンしてるヨ!」

飽きれた様な、何処かホッしたような表情で万事屋の三人は、屯所を後にした。


END

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