小説
□ワックス
1ページ/4ページ
「あ…」
出発の準備を整えている時、ロニは愛用している整髪剤が空な事に気付いた。
街まではあと2日は掛るだろう。
「別に構わねーか。」
シャキっと髪を後ろに流すのは毎朝の日課だけに何だか調子が出ず、ロニは後頭部をガリガリと掻いてため息をついた。
後ろでは木の根を枕に気持ち良さそうに眠る少年。
既に5回ほど声をかけているのだがまだ起きない。しかし意識は浮上しつつはあるはず…もう一息と近づいて細い肩を揺らす。
「おいカイル!いい加減起きねえと、襲うぞ!」
ガクガクとさらに揺さぶられる少年の身体に力が入ると、「ん〜」なんて言いながら伸びを始める。
「…ったく、ルーティさんに『死者の目覚め』でも伝授させて貰うべきだったぜ…」
「…!ししゃ…の、目覚めっ!?」
ぱかっと大きな瞳を開くと、晴天より深い蒼。
「アレ…?ろに、おはよー。」
これで「大切なものを探す旅」の途中というのだから、脱力してしまう。
遅い朝食を済ませて、荷物をまとめるとカイルの視線を感じた。