小説

□14デイズ◆
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「やば〜っ…間に合わないかも!」

季節も冬に向かう朝の駅構内。…と言っても田舎なので、人はまばらなのだが。そんな平和な場所に似つかわしくない、階段を疾走する少年がいた。
明るいブロンドを揺らし、吐く息は白い。

「待って、車掌さんお願いーッ」

実はこの光景、この町の住民にはお馴染みのモノだったりする。

去年の春、乗り遅れたこの少年は線路を爆走した挙句、隣駅まで行ってしまったので(3日連続で)困った駅員は10秒くらいなら目を瞑って待っててくれるようになったのだ。(4日目の事であった)

重ねて説明するが、ここは田舎の始発駅である。隣駅までの距離は電車で20分だ。

「カイルーあと10秒なー!」
「おっけー!!」

残る5段目から飛び降りて、一番近い乗車口に飛び乗る。

「6、7、8…はあはあ…ッ間に合った〜!」

ぜいぜいと体全体で呼吸をする少年に、ドアを閉めた車掌は心の中で8秒遅れてるんだぞ…と溜息をついた。

これもいつもの光景だ。



【14デイズ】



さて、カイルは、いつもは飛び乗ったあと手近な席で寝て、終点で叩き起こされるのだが、今日は珍しくトイレに行きたくなった。
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