†Lovё confusion†

□Lovё confusion.
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恋愛教師


 
 
「ただいまー!」
「雫?」
 
 
玄関に駆け込み、息を弾ませたまま帰宅を告げるとリビングからお母さんが顔を出す。
 
靴を脱ぎ散らかすわたしに咎めるような視線を向けてから口を開いた。
 
 
「何してたの。先生もういらっしゃってるわよ」
「えっ、マジ?」
 
 
ふと足元に視線を落とすと確かに男物のスニーカーがキチンと並んでる。
 
学校を出るのが遅れた分を取り戻そうと走ってきたけど間に合わなかったらしい。
 
 
「お帰り。雫ちゃん」
「あ、良介先生!ただいま!ごめんね遅くなって」
「ハハッ、大丈夫だよ。オレもさっき着いたばっかりだから」
「ほら雫、早く手を洗って用意しなさい。いつまでも先生をお待たせしないの」 
 
開いたリビングのドアから顔を出した先生がお母さんの横に並ぶ。
 
急き立てるお母さんに「は〜い」と返事しながら、先生に笑顔を向けた。
 
返された優しい微笑みにドキドキと嬉しさが込み上げて、足元がフワフワ浮き立つ。
 
 
「すぐ用意するから待ってて!」
「あぁ」
「本当にガサツな子ですいません」
「いえ、そんな」
 
 
バタバタと洗面所に向かうわたしの後ろで、先生に謝るお母さんの声が聞こえた。
 
 


 
『成沢 良介』先生と出会ったのは中2の冬。
家庭教師として我が家にやって来た。
 
近所に住む親戚の紹介で来た良介先生は有名大学の大学院生。
教師を目指していた事もあってアルバイトだけど頼れる先生って感じ。
 
長身でスラリとした体躯。
常に微笑んでるような優しい顔と柔らかな物腰。
同世代の男子には無い大人な雰囲気に、わたしが恋するのはあっという間だった。
 
 
「おっ、雫ちゃん凄いな!また順位上がったね」
「でしょ?良介先生の教え方が上手いからだよ」
「アハハッ、おだてても何も出ないよ」
「おだてるとかじゃなくてホントだもんっ」
「ハイハイ」
 
 
先生は「ありがとう」と言いながらわたしの頭を撫でる。
 
 
また子供扱いして…。
 
 
小さい子の頭を撫でる様な仕草に複雑な気持ち。
でも嬉しさが勝ってしまって怒るに怒れない。
 
頭を撫でた大きな手が離され温もりも遠ざかる。
それを寂しく思うわたしには気づかずに良介先生は参考書を開いた。
 
 
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