†Wahiawa†

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Meet again. 【1】


 
仕事の休憩時間、冷めたコーヒーを飲みながらため息をつく。
 
開いては閉じるを繰り返すたびに携帯の待ち受け画面のキャラクターが楽しそうに動くのが余計もの悲しい。
 
あの日、杠くんと再会してから6日が経とうとしていた。
 
 
明日でちょうど1週間…。 
 
彼から電話がくるのを楽しみに浮かれていれたのは最初の2日だけ。
3日を過ぎると笑っていられなくなり、4日を過ぎると不安になってくる。
 
 
社交辞令だったのかな…。 
 
悪い癖でついネガティブになってしまう自分にイラつく。
 
『かかってこないならかければいい』そう思い直してアドレスを出すのに最後のボタンを押す指が止まってしまう。
 
 
忙しいかもしれないし、こっちからかけて勉強の邪魔になったら嫌だし…。
 
 
ぐずぐずと思い悩んでるうちに6日も経ってしまっていた。
 
 
昔のわたしだったら『声が聞きたい』ただそれだけの事で相手の都合も考えず電話できた。
 
計算も打算もなく自分に正直でいられたのに。
 
気づいたら自分の感情に正直になるすべを忘れてしまったんだ。
 
 
「蛍さん、なに携帯とにらめっこしてんの?」
「内藤先生…お疲れ様です。」
「オレもコーヒー飲みたいな。」
「今、いれますね。」
 
 
内藤先生はわたしが働く病院の内科医。
 
うちの科では研修医の次に若い先生で、年もあまり離れていないから普段から親しくさせてもらっている。 
気難しい先生が多いなか、事務のわたしにも気さくに声をかけてくれるのですぐ仲良くなれた。
 
 
「はい、ど〜ぞ。」
「サンキュー♪」
 
 
内藤先生はコーヒーを一口飲んで幸せそうに笑った。 
その顔がなんだか可愛くてつい頬がゆるむ。
 
 
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