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□幻想舞踏会 T
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「……どうしよう…」


彼女は困っていた。

あのあとすぐ立ち去ってしまった事なんてどうでもよかった。
帰る途中に彼の記憶を消してくればよかったと考えたことすら些細なこと。


「ちょっとでも格好良いなんて思っちゃうなんて…」


見惚れてしまったのだ。
そして、多分一目惚れしてしまった。
自分の三分の一も生きていないようなただの人間相手に。



「…キラ。」

「ラクス…」


いきなり呼ばれ、振り返ると母と呼べる存在の姿。
もちろんそういった概念のない世界、そう呼んだことなどないのだけれど。


「キラの元気がないので皆が心配していますわ。何か悩みでもありますの?」

そう問われ、この世界に生きるものとしてはまだ幼く、身に余る話として困っていたキラはラクスに相談をする。



「…キラの思いは別におかしいものではありませんわよ?眷族となってこの世界に来た人間も何人もいますしね。」

もう一度会いたいと思ったら、きっと会えますわ。


「…うん。縁があったらまた会えるよね。ありがとう。話したらすっきりした。」





…その時のキラは、その少年が全く同じ悩みを抱えているなんて知る由もなかった。

ましてや自分がロリコンなのではないかという深刻な悩みに頭を抱えているなんて思ってもみなかったのである。
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