【うずもれし空白・虚無】

□これが私の騎士長様!!
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 一度消失したものが、何故再び現出(アラワ)れたのかたのか。その答えを知るものは、誰もいないのかもしれない。
 もし、いるとしたら……それは神と呼ばれるものなのであろうか?
 放浪AI・リンとの出会いは、咲──神威にとって、小さな疑問として残ってた。
 神の槍は、システム管理や技術開発部で、最初から作られた物だと思っていたからだ。
 しかしリンは、神の槍は滅びた古き神の創りし物だと話していた。
 古き神とは?
 それに、薄明を経て、新しい秩序の元`世界'は生れ変わったとも言っていた。その`神'とは?
 何のことなのか、神威には見当もつかなかった。
 わからないことは、いつまでも考えても仕方がない。
 そう。今は、目の前にある問題に取り掛からなくてはならないのだから。
 あの人なら、この謎を解くことができただろうか? そう、思わないでもなかったが……

 人の手による神の槍の再生が成功した。そのことにより、碧衣の騎士団は再結成された。
 そして今現在。神威は、かつての上司のあとを継いで、騎士長を務めている。
 自分が至らないばかりに、自分が未熟だったばかりに、敬愛する上司に負担をかけてしまっていた。迷惑をかけてしまっていた。
 挙句の果てに、上司──度会一詩は、仕事中に倒れ、救急車で運ばれてしまうこととなる。
 結局、彼はそのまま長期入院し、その数か月後に起きた『冥王再来』事件のあと、退社してしまった。
 表向きには、健康上の理由で自主退社だが、本当の理由は、事件の責任を取らされたのだった。
 自分にもっと力があれば、もっと役に立つことができたなら、そんなことにはならなかったかもしれない……
 そのことが、長いこと神威を苦しませていた。今現在も。
 あの時のような、苦い思いはしたくない。
『柴山──最初に`世界'に感じた愛を忘れるなよ』
『おまえは、世界を守ってやれ』
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