【ガンダムOO/MOON&SUN】
□消毒
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〔消毒〕
「あれ? 兄さん、何でいるの?」
部活を終えて学校から帰って来たライルは、家にバイトに行ってる筈のニールがいるのを見て驚いた。
「ライル……」
と、ダイニングのテーブルについていたニールは慌てて目許を拭い、帰宅したばかりの弟へと振り返る。
泣き腫らしたニールの顔を見て、ライルはハッとなる。
「兄さんどうしたの!?」
「なんでもねーよ」
「何でもない訳ないだろっ!? そんな顔して……
一体どうしたんだよ」
「………………」
暫く黙りこくってたかと思うと、実は……とニールは話し出す。
ニールには以前からとても仲の良い先輩がいた。
その人から何度も一緒に部活をしようと勧誘されてたのだが……
「押し倒されてキスされた!?」
驚愕するライルに、コクッとニールは頷く。
自分はバイトを優先したいからと今まで断ってきたのだが、ニールはとうとう先輩の熱意に負け、今日部活の見学に行った。
そうしたら、先輩を始め数人の部員に囲まれ──
「……騒ぎを聞き付けて誰かが来なかったら、おれ……」
ニールはその時の恐怖を思い出したのか、目に浮かんだ涙を拭う。
生徒数人と教師が助けてくれたおかげで、大事には至らなかったという。
「……っ」
ライルは歯がみする。
ニールを気に入って懇意にしていた先輩は、ライルも知っている。
ニールは先輩に懐いていたが、ライルは違っていた。
何故だかは解らないが、気に入らなかった。
それで先輩がニールに馴々しく触るのを快く思わず、何度かニールに「あいつに近寄るな」と言っていたのだが──
ガタッ、と勢いよく立ち上がると、ライルはドアへ向かおうとする。
「ライルっ!?」
ニールは慌ててライルを追い、ライルの手を取り引き止める。
「何処行く気だ!?」
「決まってるっ、あいつらのとこだ!」
「よせっ。先生が何とかしてくれる」
「先生が何とかするからって黙っていられるか!
おれの兄さんを傷つけて──」
「何もされなかった!」
「キスされたんだろ!? 躰撫で回されたんだろ!?」
「っ……そう、だけど……」
「っ!? あいつら殺してやる! ぶん殴ってやる!」
「ダメだっ!?」
ライルは怒っていた。
先輩たちに。
何より自分自身に。