【時空漂える泡沫・黄昏】

□悪夢
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 薄暗い石造りの遺跡。
 松明に照らされる二つの影があった。
 一つは青髪を逆立てた重槍使い。
 もう一つは深緑の髪を前髪だけ左右非対称に伸ばした双剣士。
 二人は寄り添うように立っている。
「っ、あ……」
「チェックメイト……♪」
 苦悶の呻きを漏らす男へ、双剣士の男は囁きかける。
 相手の胸を軽く押すようにして、相手のみぞおちに刺さった刃を引き抜く。
 重槍使いの男はゆっくりと倒れていく。
 スローモーションの様に倒れゆく男を目で追い、双剣士は刃についた血をペロリと舐める。
「真っ赤な血にまみれて……キレイだよ、クリム♪」
 ククク、と含み笑いをする。
 クリムと呼ばれた男は石床に仰向けに倒れた。
 苦しげに呻く。
 身体のあちこちに無数の傷を作り、満身創痍だ。
 うっすらと目を開け、クリムは双剣士を見つめる。
 赤い目をした黒衣の男。
 自分の愛しい者。
「楚……良……」
 しかし、彼を見る目には明らかな怯えの色があった。
 それに気付き楚良は、
「なに? コワいの?」
 揶揄うような、冗談めかした様な口調で言う。
「………………」
「大丈夫、優しくするから」
 クリムは逃げようとするが、腹部に負った重傷の為、思うように動けない。
 僅かに身動ぎするだけだ。
「約束だよ──クリム」
 楚良は言う。
 優しい声で。
「今日こそ、オレを抱いてよね」
 楚良はクリムの上半身を抱き起こし、彼の唇に自分のそれを重ねる……
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