【時空漂える泡沫・黄昏】

□すてっぷ・あっぷ
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 鬱蒼と樹々の茂る中、二体のPCが戦っていた。
 一人は深緑の髪で前髪を長く伸ばしている、黒衣の双剣士。
 左頬を斜めに走る傷のある、野性味のある貌(カオ)だが、どこか中性的で。
 その中で、ギラギラとした血色の瞳が際立っていた。
 かなりの長身だが、もう一人はそれよりもまだ高い。
 水色の髪を逆立てて、後ろは襟足で細く束ねている。
 瓜実顔の一見女性的な貌だが、その目は切れ長で。黄水晶(シトリン)の瞳を持ち、鷹を想わせる精悍さがあった。
 特徴的なのは逆立った髪型だけでなく、衣装と武器。
 目にも鮮やかな紅の衣に、刃渡りが大きめの薙刀の様な槍を持っていた。
 黒衣の男は楚良といい、そのPCは青年だが、使用しているプレイヤーは、まだ十を少し超えたばかりの少年だった。
 対して紅衣の男はクリムといい、青年の姿のPCに見合った、二十歳を半ば過ぎた年相応の人物だった。
 二人はよくこうして、決闘をする。
 二人の趣味でもあるが、コミュニケーションの一貫でもあるかもしれない。
「この野郎……ちょこまかと。
 待ちやがれっ!」
「てっへーん、だ!」
 おどけた調子で楚良はバック転し、クリムの攻撃を躱す。
「待てと言われて待つヤツが、いるワケねーだろ♪」
 ベロベロバーと舌を出し、楚良は更にバック転で攻撃を避ける。
 すると背後に巨木が立ちはだかった。
 此所はジャングルにある大通りや細い分岐点から逸れ、奥まった場所にある、ぽっかりと空いた空間。
 決闘するにはそこそこお誂え向きの広さだが、周囲を樹々に囲まれている。
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