【刻まれし時空の痕跡・黎明】
□君と、この街で……
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「ソ…ラ!」
名前を呼ばれて、僕は振り返った。
少し離れたところからこちらを見上げてるのは、黒いロングスカートに白いスカーフの胸飾りがワンポイントの格好。
長い白銀(シロガネ)の髪をスッとのばした背に垂らした、重斧使いの女性PC。
名前はカール。
彼女は何故か、戦士というよりは魔女を連想させる。
それも、とびっきり暗闇の似合いそうな、謎の魔女。
「カールきゅん、見っけ♪」
ニッと笑って言う僕に彼女は、またあ……と言って苦笑する。
「私の方が先に見つけたのに、なんでまたそう言うの?」
僕のすぐ横に来て、カールは言う。
横目で見上げて来るその瞳は、暗闇の魔女のわりには、真っ直ぐだ。
彼女がこんな瞳をする相手は、極僅かしかいない。
そのうちの一人が、僕。
楚良。
闇属性の、背の高い双剣士。
「だって、そうだから」
僕の言葉に、モニター越しに疑問符を浮かべているのがわかる。
「オレが見つけたと言ったら、そうなワケ」「なにそれ」
彼女は呆れたように言い、PCに肩をすくめるモーションをさせた。
そこまでやらせなくてもいいじゃない。
僕は内心苦笑する。
カールは、初めて合った頃に比
べれば、PCに表現や表情をつけるモーションがだいぶ増えた。
たぶん、三倍は増やしたんじゃないかと思う。
「それはそうと、今日はどこへ行く?」
僅かに声を弾ませて言う彼女に、
「そうだねえ……」
僕は提案する。
初めて逢ったその日から──
僕はずっと、君を待っていたんだよ。