【うずもれし空白・虚無】

□これが私の騎士長様!!
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 CC社が多大な業績を誇るネットワークゲーム`The world'には、システム管理者がゲーム内で管理をする為に用意した団体──デバックチームがある。
『碧衣の騎士団』
 というのが呼称だ。 それは、一部のマニアなら、このゲームの元となったβ版`フラグメント'の頃からまことしやかに噂されていた、ゲームの元になったのではないかと云われている海外で公開されていたWeb小説『黄昏の碑文』という叙事詩に登場していると知っているだろう。
 かつて、ユーザーによる自営自治団体『紅衣の騎士団』というものも存在した。
 偶然にも、それも『黄昏の碑文』に登場していた。名付けた本人が、そのことを知っていたかどうかは定かではないが。
 が、今は紅衣の騎士団は存在しない。数年前に、解散されたという。
 その数か月あとに、碧衣の騎士団も解散された。理由は『冥王再来』といわれる事件が原因だった。
 碧衣の騎士団が武器としていた『神槍ヴォータン』と呼ばれる、一般にはない特殊なスキル(技能)を備えた武器が消滅してしまったから。
 その原因を知る者は、CC社社員の中でも、一部の者しかいない。システム管理者の中でも、それを知る者は極僅かだ。
 その一人が、かつて騎士団の騎士長を務めていたアルビレオ(度会一詩)──自分の敬愛する上司だったとは、当時の神威(柴山咲)は知らなかった。
 ある時期を境にして、上司・度会一詩は、ゲームについて仕事について話す時、『神』を喩えに出すことが多くなった。
 その理由に咲が気がつくのは、ずっと経ってからである。
 ある時、人は喪失(ウシナ)われた筈の神の槍を再生することに成功する。
 自分達の管理するゲーム`The world'には、奇妙な現象が度々起こる。
 他のゲームでは見掛けることのない珍しいバク『放浪AI』というものが出現するのが、その一つだ。
 神の槍──神槍ヴォータンには、放浪AIをデリート(削除)することができるスキルがある。
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