三国志テキスト
□求愛
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「劉備です。お召しにより」
部屋の中に向かって声をかけると、しばらくして扉が開いた。
後ろに関羽が控えているのを見て、曹操は少しだけ笑う。
「私は、弟を連れて来いと言った覚えはないのだがな」
「お許しを」
劉備はそれだけ言って、小さく頭を下げた。
「まあ良い。入られよ」
そういって部屋の中に消える曹操の背中を見ながら、
「いつかこの手で殺してやる」
と呟いたのは、果たしてどちらだったか。
二人は目線を合わせて何事か囁き合った後、静かに足を踏み出した。