三国志テキスト

□きっと、貴方だけ
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劉備からは、いつも甘い香りがした。
頭がくらくらとするような、甘い匂い。

「呂布殿」

その声色も不思議だった。

明らかに男と分かる声なのだが、どこか可愛らしさを感じるものでもある。

「呂布殿」

見上げてくる丸い目には強い光が宿り、決して誰にも屈しないことを語っている。

綺麗な目だ、と思う。

「呂布殿?」

何時までも口を噤んでいるものだから、訝しげな顔でこちらを見上げてくる。

ふ、と苦笑いを漏らせば、劉備は不思議そうな顔で首を少し傾げた。

「すまない」

そう言いながら酒を注いでやると、構いませんと笑って杯を取った。

「今日は存分に飲むといい」

己も杯を取る。

「俺が相手では酔えぬかな」

おどけて放った言葉を肯定も否定もせずに、劉備はただ微笑んで杯を傾けた。
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