□No Title 6
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「ねぇ、何か面白い話はないのかい?」
「面白い話?」
突然の少女の質問に僕は聞き返した。
「そう。面白い話。私をドキドキさせるような、退屈しない話」
「んー…。いきなりそんな事言われてもなぁ。」
僕は考えた。このちょっと風変わりな少女がドキドキするような、尚且つ退屈しないような話があるのだろうか。
「君、いったいどんな話にドキドキして、退屈しないんだい?」
「そんなこと、自分で考えたまえ」
「そんな無茶苦茶なぁ」
「フン」
文句を垂れれば少女は鼻を鳴らし、そっぽを向いた。
なんとも我が儘か少女だろう。
面白い話といわれても、好みなど人それぞれなのだから、少女にとって面白い話がどんなのか例えを教えてくれたっていいだろうに。
「まったく。君は相変わらずだなぁ」
「フン」
二人の背中を温かい日差しが包み込む。
僕は面倒臭くなって考えるのを止め、片方のイヤホンを外した。
「聞くかい?」
それを少女に渡す。
「ウム」
少女は小さくそう言ってイヤホンを受け取り耳につけた。
ほどよい音量。そのメロディーに耳を傾ける。
ちらりと少女を盗み見すると、少女は目を閉じイヤホンのついた耳にそっと手をあて、案外真剣にその歌を聞いていた。
「ふはは」
僕は笑いを零す。
少女は気に入らなさそうに眉間にシワを寄せ僕を見た。
「なんだよ。気持ち悪い奴だな」
「ふはははは」
少女の眉間のシワが少し深くなる。
「いいや、別に何もないさ」
そう答えた。だって本当の事を言ったら君は否定するだろ?
「フン」
少女もまたそう鼻を鳴らして再び流れるメロディーへと意識を集中した。
僕も目を閉じて少女とそれを共有した。


――僕らの関係はこれくらいが調度いい


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