□仮面
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ようこそ、いらっしゃいませ。
今日はどのような仮面をお探しですか?

おや、あなたは初めてのお客様ですか。
珍しいですね。
あなたの年齢で初めて、とは。
では、まずこの店の説明から始めましょうか。

ここは仮面屋です。
そのままの意で仮面を売っているのですよ。
猫屋と言われることもしばしばありますが…、ほら、よく言うでしょう。
猫を被る、と。
私は猫売りの主人でもあるわけですね。

ああ、仮面の必要性ですか?
仮面はあなたを守る盾だと思ってください。
人によっては嘘で固めた、だとか偽りだとか言いますけど、嘘であろうがそれでさえその人本人には変わりありませんからね。
その人によって選ばれた仮面なのですから、仮面は嘘でなく自己防衛なのだと私は思います。

さて、私の意見はさておき…。

この店は少し特殊でしてね。
いつでも故意に来られる店ではないのです。
新たな仮面をあなたが心の底から求めたときにのみご来店いただけます。
中には故意にいらっしゃるお客様もおりますが、まぁ彼らはコレクターのようなものですから。
しかし、誰だって初めてのご来店の時はここにいたそうですよ。
きっとあなたもそうでしょう?

あなたは今我が店の仮面を望んでいるのですよ。
心の底から、ね。

仮面の話に戻りましょうか。

我が店ではお望みの仮面が見つからないことはないと自負しております。
ええ、必ずお望みの品が見つかりますよ。
そしてどの店にも劣らぬ仮面であることを約束しましょう。
もし、今ここにある仮面ではお気に召しませんのでしたら、オーダーメイドやカスタマイズも引き受けております。

代金ですか?
私がお金を手にしても意味はありませんからね。
代金はお客様の人生を頂いております。

ははは、そんなに身構えないでください。
私は寿命をくれ、なんて物騒なこと言いませんよ。
命、というものも私にはあまり関係ありませんから。

ここで言う「人生」とは、私の作った仮面を被ったあなたが何を経験したのか仮面を破棄なさるときに見せて頂く、ということです。
簡単に言えば、思い出の共有ですね。
悪趣味だ、なんて思わないで下さいね。
この店にしか存在できない私は他に楽しみなどないのですから。

ずいぶん説明が長くなってしましましたね。
申し訳ありません。

これで仮面屋については一通り説明しました。

では、ごゆっくり、気の済むまで仮面をお選びください。


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