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隣ではコンビニで買ってきたらしいサラダを食べている男子生徒。
どうやら朝はおにぎり1つだったらしく、2限目の今限界に達したらしい。

授業中にもかかわらず、休み時間のようにうるさいこのクラス。
担当教員は痺れをきらし、一部の生徒を順番にあて、英訳をさせている。

男子生徒は教科書を立てるという古典的な方法でサラダを隠し、それをむさぼっている。
まさか、教科書一冊で隠しきれるはずがないのだが、運よくその生徒の前には教員の目から盾になるように座っている。
それでも、やはり目敏い教師は気付いているだろう。
しかし男子生徒はその行為を止めることはない。
私も含め周りの生徒も笑わずにはいられない。

さらにその男子生徒をそれなりに仲のよいらしい男子生徒が後ろに移動してきて、サラダのおこぼれをもらっていた。

授業などもうあってないものとなっていた。

一方、教師にあて続けられているグループは、予想に反して英訳を楽しんでいた。
各単語は何となく理解しているくせに、それらが上手く並べられないのだ。
しまいには入ってもいない単語が登場し笑いをとっていた。
単語を何度も並べ、同じ英文を何度も訳してはいるが、どうも日本語として難解な文になっていた。
こうまで面白い訳を聞いているうちに教師の機嫌もそれなりに良くなっていくのだった。

一般的な高校3年生の秋、とは受験勉強に専念し、ストレスでどうにかなってしまいそうなのだろうけれど、このクラスにはそんなもの微塵も感じない。
なんとも暢気なクラスである。

そのグループを傍らにサラダを食べている男子生徒は早々とそれを食べ終わったらしい。
移動してきた男子生徒も元の席に戻っていた。
男子生徒は立てた教科書をそのままに、耳にイヤホンをつけ、眠りにつこうとしていた。
が、寝れなかったのか次は漫画を読み出した。
しかし、それもすぐに飽き、ついには仲の良い友達が固まる席へと移動しお喋りに没頭した。

と、まあ私の在籍しているクラスはどの授業もこんな感じだ。
いや、細かく言えば、このクラスの2/3を占めている理系V型の二十二人なのだが・・・。

一緒に授業を受けたことのない文系の生徒からは理系は真面目だ、という風に意識されているようだが、酷い勘違いだ。
むしろ不真面目極まりない。堂々たる態度で当たり前のように突っ伏す。
ケータイまたはゲームに没頭する。
耳にはイヤホンが常備されている。そんな様は日常的だ。
女子が少ないことをいいことに下ネタに走る生徒も少なくないのも問題である。
更に推薦で合格を勝ち取った生徒も多いので卒業さえできれば問題ないという楽観的な意識が多い。
それも拍車をかけているのだろう。

この風景は去年から大して変わっていないが、一人残らず進級できたことに疑問を抱く人も多いだろう。
その理由について簡潔に述べるならば、理系の人間は容量がいいのだ。
どれだけ成績が悪くとも、やらないだけであって、やればことごとく成績は上がる。
その容量のよさで今までのテストを切り抜けているのだ。
教員団からすれば性質の悪いことこの上ないだろう。
かわいそうに・・・。

そして私はその二十二人の中で四人しかいない数少ない女子生徒の一人なのだが、それなりにこのクラスを楽しんでいる。
こうやって毎日このユーモア満載のクラスを観察するのだ。
そして自分は決してその対象に含めない。
ただ目立つことなく、それを観察する。
我ながら、自分もユーモアの一部なのだと思う。


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