tennis novel
□モーニングコール
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「ねぇ部長、朝、不二先輩のことなんで怒鳴ってたの?それにやたら不二先輩達の視線感じたし…」
練習中気付けばやたらと不二や乾、菊丸達の視線を感じ、そちらを向くと、こちらを向いて話していた。リョーマの視線に気付くと不二はにっこりといつもの笑みを見せ、乾は何かノートに書き込んでいた。
それは不二が手塚と話した後からのことだったのでリョーマは何か手塚なら分かるのではないかと聞いてみたのだった。
「ああ…、ちょっとあってな」
「ふーん」
手塚が言いにくそうなのでリョーマは深く聞くことを避け、気のない返答をする。
午前中の練習が終わり、昼ご飯を食べようと手塚とリョーマは中庭に移動して来ていた。
「リョーマ、母がお前にと弁当を作ったのだが食べるか?」
手塚は自分の分ともう1つの弁当を出し、片方をリョーマに差し出した。
「ホントに?オレ、彩菜さんのご飯大好き〜vv それに朝、母さん弁当作ってなくてコンビニでパン買っただけだったから…」
それは食べ盛りのリョーマにとってかなりつらいことだ。
手塚は自分の母親に感謝した。
本当にリョーマが嬉しそうに笑うので手塚も顔を緩ませる。
「そうか、それはちょうどよかったな…」
「彩菜さんにお礼言わなきゃね!ってことで部長、今日部長ん家泊まりに行ってもいい?」
リョーマに弁当を渡し、安心したように言う手塚にリョーマはちょっとしたお願いをする。
「別に構わないが…。何故そう繋がるんだ?それにお家の方には言って来たのか?」
「だって彩菜さんに直接お礼言いたいし?それから家には電話しとくから大丈夫!」
「そうか…。母や祖父が喜ぶな。早く連れて来いと急かされていたところだ」
手塚の家はいつでもリョーマを歓迎してくれている。手塚の両親も祖父もリョーマが可愛くて仕方がないのだった。
「そうなの?嬉しい!あっそうだ部長、朝モーニングコールありがと…」
「ああ。お前が遅刻しないですむのならやった甲斐がある。毎日グラウンドを走らすのも嫌たがらな」
「だったら走らさなきゃいいじゃん」
リョーマにしてみれば毎日走るのはテニスをする時間が少なくなるので嫌なのだ。走るのは嫌いではないし、たいした距離ではないのでやってはいるが少しでも多くラケットを握ってボールを追い掛けたい。
手塚としてもリョーマが朝弱いのを十分理解しているが、部長としてはリョーマを贔屓するわけにもいかない。
「俺だって好きで走らせている訳ではない。遅刻するお前が悪いんだろう?」
「ちぇっ、だったら毎日モーニングコールしてよね?明日はいいけどさ。直接起こしてくれるでしょ?」
「別に構わないが…。お前は自分で起きる努力をしたらどうだ?」
「無理だから遅刻してるんでしょ?」
「ったく、お前は…。
分かった、毎日してやる。そのかわりきちんと遅刻せずに来るんだぞ」
「やったー。部長大好きvv」
リョーマは痛いところをつかれても開き直り、お願いまでしてみせる。
それには青学の帝王も形無しだ。いくら鬼部長と他の部員に恐れられようがこの生意気ルーキーには敵わない。