□天使と悪魔5
1ページ/3ページ


「どういう意味だよ、それ!」


神の胸ぐらを掴み上げる。何かの冗談だと思いたかった。


「フェンが天使じゃないって…」

「悪魔でもない。」

「………は?」


天使でもなく、悪魔でもない?


「…待って、今整理するから」


手を放して顎に手をあてる。天使でも悪魔でもないとなると、あと思い付くのは1つしかない。


「じゃあ人間、ってこと?」


だが、人間が天界に入れるハズがない。生身で天界の門を潜[くぐ]ることは出来ない。当然冥界の門も潜ることは出来ない。


「人間だってなら、どうやって天界に入ったのさ。」

「普通なら寿命が尽きた時のみ門が開くのだが、時々うっかり紛れ込んで来る者がいる。」

「待ちなよ、何、そのうっかりって。」


明後日の方向に神の目が泳いだ。レノは少し頭痛がした。


「門番に仕事させなよ。」

「我がやった方が早い。」


なんとなく、天界の住民が平和呆けしている原因が分かった気がした。神自らがなんでもやっていれば完璧に決まっている。が…。


「一人でやってるからうっかりなんか起きるんだよ」


なんとなく、神にも自覚はあるらしい。


「…話、戻して。」

「どこまで話した」

「紛れ込んで来る奴がいる、って所まで。いきなりボケないでくれる?」

「その紛れ込んで来た一人がフェンだ」


華麗にスルーされ、しかも色々すっ飛ばして結論を言われた。ちゃんと説明しようと思っていないのか、この神は。


「突っ込みたい所がありすぎて涙ちょちょ切れそうだけど、今はいいよ。で、何かそれで問題があるわけ?」

「それがあるんだよ、少年。」


突然の第三者の声にレノが過剰に反応した。


「ちょっとォォォ、いきなり人の背後に立たないでよ!」

「あぁ、ごめんごめん。」


爽やかオーラ全開の笑顔で歯がキラリと光った。レノの知らない顔だった。


「誰、おじさん。」

「僕はクリムト。フェンのパパだよ。」

「へぇ〜、フェンの。…って、フェンのッ!?」


目が飛び出るんじゃないかというくらいレノが目を見開いた。


「いつ来た」

「悪魔でもない、あたりかな。ちゃんと説明しなきゃ駄目じゃないか」

「任せる」

「君はまったく…」

「何、仲悪いの?」


二人のやり取りをニヤニヤしながら見ていたレノが口を挟む。
その顔を見て、神はレノが悪魔だったことを思い出した。


「え、僕たち仲悪いのかい?」

「知らん」


一言でバッサリ切り捨てた。
神の弱味というか、弱点的なものを見つけたレノは後で詳しく調べてみようと思った。なんたって彼は悪魔だ。ろくな事には使わないだろう。


「あれ、父さん?」


話題のど真ん中にいる人物、フェンがアルミナと共に現れた。


「どうしたの?」

「神様にちょっとね。」

「…また何かご迷惑をかけに来たんじゃないよね?」

「また?」


アルミナが首を傾げて問う。


「何言ってるんだいフェン。そんな事あるわけないじゃないか。」

「研究に没頭したら父さん何するか分からないじゃない。前も神様の生態系を解析するんだーってとんでもない事言い出したし。」

「それは研究者としての血がね…!」

「聞きません。」


何をしでかしたんだフェン父。かなり気になるところだ。


「で、何の話をしていたの?」

「フェンの事。」


ちょ、おま…!?
神とレノが同じような顔をした。


「…どうした、二人共。」


空気的な存在だったアルミナが口を開いた。彼女は何かを感じ取っているようだ。


「「………」」


二人は沈黙の上、目を反らした。


「私?」

「そう。フェンの事。」

「どんな事を話してたの?」

「ん〜、その前に、お母さんに会いたいかい?」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ